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2021年12月の記事一覧

ディスクブレーキ採用のクロスバイク 6選【2022モデル版】

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雨の日にも安定した制動力を発揮するディスクブレーキ。かつては選手が使用するマウンテンバイクなど一部の競技車に採用されていましたが、最近ではロードバイクやシティスポーツ、ミニベロなどにも採用されるようになってきました。

ディスクブレーキは金属製のブレーキワイヤーを用いる「メカディスク」とオイルを使用する「油圧式ディスク」の2種類あります。
数年前まで、油圧式は10万円を超える高級バイクにのみ搭載されるマニア機材でしたが、シマノ「MT-200」などを採用したモデルが近ごろでは7万円台でも購入できるようになってきました。

コロナの影響で自転車の製造・入荷が不安定になっていますが、2022モデルでお手頃モデルを6台選んでみましたので、ご購入の参考にしてみて下さい。

 

ディスクブレーキ採用のクロスバイク 5選

 

giant escape r disc【メーカー】giant
【商品名】escape r disc
【税込価格】¥71,500
【フレーム】アルミ
【重量】11.5kg
【変速】24(3×8)速
【タイヤ】700x30c[仏式バルブ]
【ディスクブレーキ】tektro TKD-143

 

 

fuji raiz
【メーカー】fuji
【商品名】raiz disc
【税込価格】¥75,900
【フレーム】アルミ
【重量】10.8kg
【変速】16(2×8)速
【タイヤ】700x32c[仏式バルブ]
【ディスクブレーキ】shimano MT-200
(2022年7月発売予定)

 

 

 

araya mfx【メーカー】araya
【商品名】MFX -muddy fox xross
【税込価格】¥73,700
【フレーム】アルミ
【重量】11.6kg
【変速】24(3×8)速
【タイヤ】700x32c[仏式バルブ]
【ディスクブレーキ】tektro HD-M285

 

louis garneau setter 9
【メーカー】louis garneau
【商品名】setter 9.0 disc
【税込価格】¥72,600
【フレーム】アルミ
【重量】11.7kg
【変速】24(3×8)速
【タイヤ】700x28c[仏式バルブ]
【ディスクブレーキ】shimano MT-200

 

 

gios mistral
【メーカー】gios
【商品名】mistral disc
【税込価格】¥64,900~75,900
【フレーム】アルミ
【重量】11.7kg
【変速】24(3×8)速
【タイヤ】700x32c[仏式バルブ]
【ディスクブレーキ】3仕様ラインナップ

 

 

raleigh rft【メーカー】raleigh
【商品名】RFT -radford traditional
【税込価格】¥86,900
【フレーム】クロモリ
【重量】12.9kg
【変速】24(3×8)速
【タイヤ】700x28c[仏式バルブ]
【ディスクブレーキ】shimano MT-200
(2023年3月発売予定)

 


 

これら紹介したバイクは、Vブレーキ仕様の原型となるモデルがあり、それのディスクブレーキ版として追加されたという経緯をもっています。どちらのブレーキが優れているのかは、人によって意見は様々ですが、価格はディスクブレーキ車の方が数千円から1万円ほど高くなっています。

紹介の6台はいずれも各ブランドの最安値のディスクブレーキ採用のクロスバイクで、GIOS「MISTRAL DISC」は油圧式とメカディスクがラインナップされていますが、他はすべて油圧ディスクブレーキです。最近ではUBERの配達用にこのタイプを選ぶ方が増えています。

 

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フードデリバリーと共進化するシェアサイクル

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大阪市の中心部では多くのフードデリバリーのスポーツ自転車を目にします。コロナ終息の目途が立たず、閉そく感が漂う中で、この業態の急拡大が注目であると本ブログでも2月に書きましたが、スポーツ自転車の有用性が徐々に受け入れられ、物流の一端を担う新しい社会へと転換を垣間見たような気がしています。

 

foodderiveiry 2021

 

2月の調査では、フードデリバリーに使用される自転車の約半数はスポーツタイプの自転車で、その大半がクロスバイクとなっていると紹介しました。扱いやすく、価格も安価なものから高くても10万円ほどで購入ができ、配達がゲーム感覚で楽しくなり、ある程度の速度が出て配達の効率化もできます。

この分野の主役がクロスバイクであるということを正視していただいた上で、配達パートナーの5%ほどが活用している電動シェアサイクルの話をしたいと思います。

 

快走する電動アシスト付きのシェアサイクル 

2017年に自転車活用推進法が施行されると大阪市でも阪急やJR西日本など電鉄会社がレンタルサイクルの子会社を設立、この分野で先行する中国企業なども含め、複数の事業者がレンタルサイクルのサービスを開始します。

 

hello cycle

 

レンタルで使用される自転車はスポーツタイプではなくママチャリ型の電動アシスト車で、特に目を引くのはNTT Docomoが展開する「bike share service」の赤い小径車です。大阪市内ではNPO法人とタッグを組み急拡大、レンタル自転車のおよそ8割がこの赤い自転車となっています。

 

「地元よりも、電車賃を払って市内で稼働した方が稼げる」

 

「bike share service」はアプリを使い簡単に登録が可能で、低コストで電動自転車が利用できます。同サービスを利用している配達員に話を聞くと、郊外から電車で出勤し市内で稼働した方が効率よく仕事ができるといいます。シェアサイクルはこのようにビジネスで利用以外に、観光やサイクリング、交通手段として成長する新産業であると考えられています。

docomo share bike

 

シェアサイクル事業のボトルネック「壊された自転車」問題

シェアサイクルは今後も成長を続けるのでしょうか。

スマホ端末を使用したシェアサイクルは2016年頃から中国にて急拡大、悪戦苦闘しながらも庶民の足として利用されています。フードデリバリー業のDiDiも、ソフトバンクGの支援を受けて中国国内にて、黄色がシンボルのシェアサイクル業「ofo」(オッフォ)に出資、DiDiの女性社長ジーン・リウが役員を歴任し大量の自転車を投入、日本でもシェアサービスを展開し、一時期は世界トップの自転車メーカーのジャイアントの買収も口にする程の勢いを見せていました。

offo

 

急成長するofoは資金の調達に苦しみジーン氏を通じて、ソフトバンクGに追加の融資を懇願しました。しかし、ジーン氏は同サービスの収益性と従業員の報酬の高さから投資不適格と判断し、ひっそりとサービスを終了しました。壊れた自転車が山積みになったニュース報道は、革新的サービスと最新のテクノロジーをもってしてもレンタル自転車業の難しさを物語っていました。

2010年代は、ユニクロなどの日系企業をターゲットに破壊行為が激化していたイメージがまだ残っていて、粗暴な中国人が自転車を破壊して故障車の山ができたと誤認している人もいました。報道においても「壊れた自転車の山」ではなく「壊された自転車の山」と誤解を招く表現を用いているケースもありました。

自転車の修理は労働集約型の作業で、たとえ合理化を進めても人が1時間で修理できる自転車は数台で、ofoのように補修作業者に高額な報酬を出していては収益化は難しくなります。要するにこの事業のボトルネックは、自転車の故障にどう対応するかなのです。

自転車は必ず壊れます。

新しいうちは故障が少ないのですが、タイヤやチェーンなどは消耗品で数年で交換しなければなりません。大量の自転車を迅速に対応していかねければ、日本でも「壊された自転車の山」ができてしまいます。この課題の解決策に「修理を外注すればいいのではないか」と考える人もいるかもしれませんが、それはかえってコスト高となってしまいますし、そもそも、技士の私から見ると、自転車が壊れる度に修理に出すのは、パソコンがフリーズするた度に電器屋に行くほど非効率に見えます。したがって、この事業の真価が問われるのは、部品が消耗する2~3年後という訳なのです。

 

話がフードデリバリーにもどりますが、急成長するUBER EATSやDiDiに対し、先行していた「出前館」の成長速度が遅いのもこれで説明がつきます。前者は自転車を配達員が用意し修理代も負担するのに対し、出前館はアルバイトによる宅配と「配達業務委託」の両輪となっています。アルバイトが配達する自転車やバイクは同社が用意し、アルバイトが修理代を負担することはありません。これらの経費が負担となり、他社と比べ成長が遅くなり、数年後には乗り越えなければならない試練の時期が訪れるということとなります。

 

 

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放置自転車、全国ワースト1「新今宮」

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大阪のシンボルでもある通天閣がある「新世界」は、地下鉄御堂筋線「動物園前」の北側にあり、最近では観光客も増え地下鉄のサインも「動物園前(新世界)」と併記されるようになっています。JR・南海「新今宮」と乗り換え駅で利便性が良く関西でも屈指の乗降数を誇り、多くの人が行き交う場所です。

shinsekai

自転車の利用者も非常に多くみられ、駅前には溢れんばかりの駐輪車がみられます。
国土交通省の調べによると同駅の放置自転車の数は1062台、この数は梅田や久屋大通(名古屋市)を上回り、全国ワースト1の放置数だそうです。一体、なぜこのような状況になってしまったのか、現地に向かい現状を調査してきました。

shinimamiya

新今宮は難波の南側で天王寺の西側、浪速区と西成区の境界に位置します。
サイクルショップ203からも自転車で20分ほどの場所で、本ブログでも「じゃりんこチエ」の舞台として紹介しています。

 

社会問題が山積みの失敗都市「新今宮」

大阪市は「自転車等の駐車の適正化に関する条例」が定められ「放置禁止区域」に自転車を放置してはならないとしています。新今宮は、駅出口前の歩道のほんの一部が禁止区域に指定されていますが、ほとんどは禁止区域ではありません。したがって、市民生活に著しく阻害されるほど長期間継続して放置しない限り撤去されず、駐輪されている自転車が多い理由と一つと考えられます。

 

airin

 

周辺には無料で利用できる駐輪場があり合計で2800台以上収容できるようですが、利用者が多いため駐輪場は満車状態でスペースがなく、路上に駐輪しなければならない状況です。

新今宮駅の南側は「あいりん地区」と呼ばれる「ドヤ」が集中する地区で、路上生活が多く、維新が市政を担う以前は、暴動や路上強盗等が頻繁に発生するハードボイルドな地区で、2007年には英語講師リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件の犯人・市橋達也が逃亡中に身を隠すなど治安の悪さが指摘されています。

橋下市長(当時)は同地区の治安改善のため、路肩の糞尿汚れの美化・クスリの売人を監視するセキュリティカメラの導入・コピー商品や違法DVDなどの路上販売が行われている通称「ドロボウ市」の摘発など集中的に実施、以前に比べれば治安も少しマシになってきているように思えます。

 

nishinari

このように同地区は問題が山積みのため、自転車の利用環境の整備は後回しになっているというのが実情となっているようです。放置自転車を条例で規制できない背景には、大阪市の特異な行政や自転車小売業も絡む事情があり、この問題は複雑であまり知られていないと思いますので、またの機会に詳説したいと思います。

 

治安回復のために繰り返される荒療治

駅の北側に目を向けると大型パチンコ店「MARUHAN」が鎮座しています。

festivalgate

もともとこの地は市有地で市電の車庫があり資産価値が高く、駐輪場を確保するに充分な土地がありました。

1997年に都市型遊園地「フェスティバルゲート」として再開発、開業当時は東京ディズニーランドに匹敵する人気を博しましたが、USJの開業や平成不況などで客足が伸びず赤字化、施設の売却交渉も難航し「5年間はパチンコホールにしない」という条件の下、パチンコ企業最大手「マルハン」に当初予定価格の半値以下で売却、マルハン側は「アミューズメント施設や韓流テーマパークとして活用する」としていたものの、結局は何も開業しないままパチンコ店がオープンします。橋下市長は「誠実に対応して欲しい」としながらも「5年間」という期限付き契約に「失敗の事例」と会見しました。

また、維新は貧困や高齢化に悩むこの西成区を、ミナミ中心部の中央区やサイクルショップ203がある西区と統合するいわゆる「大阪都構想」発案、2度にわたる住民投票の結果はご存知の通り廃案となりました。

tsutenkaku

 

国内ワーストといえる治安の同地区も、数年前から観光客向けの民泊施設が急増、「新世界」や駅の南西側にある遊郭「飛田新地」には国内外から多くの観光客が押し寄せ、道中の商店街には中国人パブが軒を連ね、活気を取り戻してきています。

来春には星野リゾートが運営する大型宿泊施設「OMO 7」開業予定でますます注目度が高くなっていただけに、かねてからのコロナのまん延は同地区にとって本当に痛恨だといえます。

hoshino shinimamiya

今後も本ブログでは、「新今宮」の放置自転車の続報など大阪の自転車利用環境の整備状況を紹介していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

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戦後最大の集団偽装事件「大阪府警 治安偽装報告」を顧みる

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2014年7月30日、大阪府警は2012年までの過去5年間に自転車盗など計8万件以上の事件数を少なく装う「不適切処理」があったと発表しました。

街頭犯罪の認知数で全国ワースト1位が続いていた大阪府は汚名返上のため件数を不正に操作、2008~12年にわたり全65署で府内の刑法犯認知件数のおよそ1割を過少計上、未計上のうち自転車盗は45%を占める3万7千件で最多、府警は内規基づいて幹部を含む処分がされました。

 

「自転車は被害申告後に見つかるケースがある」

 

不正が始まったきっかけは08年に橋下知事(当時)が「街頭犯罪の全国ワースト1」の返上を表明、減らせという重圧から現場ではありのままを報告できなくなり、同一犯をまとめて「1件」、自転車部品盗難は実害がないとして計上しないなどとした独自の解釈「大阪ルール」が全署に広がり過少報告が行われていました。

 

osaka police

 

「不適切処理」から10年、処分が口頭注意など軽微だったことから若い警官の中にはこのような不正があったこと自体知らない人もいます。風化させないためにも発表翌日の新聞記事を読み比べ、振り返ってみたいと思います。

 

 

 


 

<読売新聞>

組織ぐるみ 市民欺いた


yomiuri
[特色]
・不正を「組織ぐるみ」と断定
・経緯が分かりやすい
・統計偽装が与える影響を懸念している

 

 


 

 

<毎日新聞>

「ワースト1返上」の重圧 市民ら落胆


mainichi

[特色]
・堺署が34.4%過少報告しているなど上位5署を公表している
・吉本興業木村政雄プロデューサーにコメントを求める謎の取材先
・「放置自転車が後をたたないとされる古川橋周辺」と事件と無縁ような写真を掲載
・処分280人としている(他紙は90人ほど)

 


 

 

<産経新聞>

不正処理 ルール都合よく


sankei
[特色]
・府警が組織ぐるみの不正を否定していることを批判
・不正はあったが認知犯罪自体は「減少」しているファクトを指摘
・グラフが難解

 

 


 

<朝日新聞>

橋下改革が拍車

asahi
[特色]
・殺人や強盗など「重要犯罪」が605件含まれていることに言及
・お得意の橋下批判

 


 

大阪府警がこのような不適切処理を行っていたことは「自転車防犯登録所」でもある自転車店はうすうす把握していたと思います。少なくとも私は被害者の方から「警察が被害届を受理してくれない」などの声を多数いただいていて、協会を通じ改善を要求していました。このような声は処分発表後もしばらく続いていましたが、警察の体制が厳格化したのかここ数年はほとんどなくなり「大阪ルール」も消滅したように感じます。

しかしながら、近年では転売目的で高額車にターゲットを絞った事例やライト・サドル・電動バッテリーなどの部品盗など計画的な手口が報告されています。当店は小さい店ではありますが、自転車錠は常に40種200錠以上店頭ストックしていますので、自転車盗対策はご相談ください。

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自転車の販売価格前年比8%上昇 

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世界的なコロナ拡大で、自転車製造のサプライチェーンに甚大な影響を及ぼし、納期遅れや長期欠品などお客様には迷惑をおかけしております。コロナ前のような状況に戻るめどは立たず、少なくとも来年夏くらいまでは、店頭在庫分から自転車やパーツを選んでいただくような販売方法となることをお詫び申し上げます。

さらに、2022モデルは、様々な事情から、ほぼすべての自転車が値上げとなります。
一例を挙げますと以下の通りとなります。

 

・GIANT「ESCAPE R3」 ¥52000 → ¥56000
・GIOS「MISTRAL」¥51000→ ¥54000
・FUJI「FEATER」¥69000 → ¥75000
・tokyobike「26」¥76000 → ¥81500
・ルイガノ「EASEL 7.0」¥55000 → ¥62700

 

主要販売モデルを平均するとこの1年間で販売価格が8%上昇、納期の見通しが立たないことから受注の中止も相次いでいます。なかには、本日の受注で納期予定が2023年春(注意:2022年ではない)になるモデルもあり、専門学校の通学のために購入を検討している方の自転車が、卒業するころにようやく納車になるというトンデモないケースも想定されるなど、異常とも思える状況が常態化してきて、巷に漏れず自転車店の運営も厳しくなっています。

 

| 上昇する自転車の価格

経産省の調査では2016年34000円だった自転車(電動アシスト自転車を除く)の平均販売価格は、21年には47000円にまで上がり、22年はいよいよ5万円を出さなければ普通の自転車も購入できない状況に突入します。2000年代前期には平均販売価格10500円、局所的には6000円台で自転車が買えたことを考えると、この数年の急激な価格の上昇に自転車の買い替えを躊躇する方もいるのではないでしょうか。

 

「思っていた以上に高い」とお客様からの指摘を受けることも多くなり、頭をかかえ書店に行くと「安いニッポン」というタイトルの新書が平積みとなっていました。「どこが、安いんだよ…」と、思いながら手に取り読んでみると、意外にも日本の自転車産業にも当てはまる部分が多いように感じました。

 

yasuinippon

 

日本の自転車産業は1970年代ごろから黄金期を迎え、国内だけでなく世界的に高い評価を得ます。しかし、バブル崩壊、長引く不況などから国内の産業集積が弱体化、製造拠点が日本から中台に移っていったことは本ブログでも何度か取り上げています。気が付けば、弊社のパーツ売り上げも大半が台湾製となっています。

未だに、コスト削減のために各企業が台湾に工場を構えていると勘違いをしている人がいますが、すでに台湾の技術やブランド力は日本のそれを大きく上回り、独壇場となっています。

例えば、東大阪のOGKのグリップは300-800円ですが、米国ERGON社のグリップは3200-6000円と10倍近い価格です。ERGONは米国企業ですが、製造は台湾で行っています。同様に台湾の新興ブランドGUEEのグリップもOGKのグリップの2倍以上の価格で販売されています。

 

ogk erogn

自転車錠をとってみても、日本のゴリンのロックの中心販売価格が2000円以下に対し、海外メーカーは6000円を主力にラインナップをしています。しかも、日本企業の製品はこの安さをもってしても、決して高い評価を得ている訳ではなく、もはや世界市場を主戦場と考えていないようにも見えます。ジャーナリストの野嶋剛氏は日本の自転車企業のこのような危機的な状態を「不戦敗」と評しています。

 

gorin kryptonite

 

「安いニッポン」では、日本のディズニーランドの入場料やダイソーやくら寿司の価格が海外に比べ最安値水準にあるということを指摘、「一物一値」のiPhoneやスタバのラテが高く感じ、贅沢品となっているとしています。

 

停滞する国内輪業と「安いニッポン」

日本人には自転車の5万円が高く感じるかもしれませんが、オランダやフランスの平均単価は10万円を超えています。国民性などの文化的背景などの影響もあると思いますが、同書では「長期間の経済停滞」と「低所得化」に原因があり、脱却の糸口を模索しています。

バブル崩壊後に伸び悩む国内の所得水準に、国内の自転車企業は、海外メーカーのように価格転嫁できず、40年前とほとんど販売価格が変わっていないように思えます。1982年当時の雑誌を開くと、高校生に人気だったブリヂストンのスポーツサイクル「ロードマン」が49800円、丸石の軽快車も49800円、ツールドフランスも制したミヤタのロードが30万円。流行の最先端であるアラヤ「マディフォックス」が10万円。当時の平均時給が423円だったことを考えると、さぞかし自転車企業は儲かったことでしょう。

 

<40年前の自転車の価格>
・ブリヂストン スポーツ車「ロードマン」 ¥49800
・フジ スポーツ車「フェザー コンポ」 ¥49900
・丸石 軽快車「プレイタウン」 ¥49800
・アラヤ MTB「マディフォックス」 ¥106000
・ミヤタ ロードバイク「エアロ」 ¥298000

(1982年大学初任給がおよそ13万円、最低賃金423円/h)

maruishi playtown
丸石「プレイタウン」サイクルスポーツ1982年1月号より

 

 

現在は自転車が安く購入でき、このような物価の停滞は、消費者の立場からすると歓迎すべきことのようにも思えます。しかし「安いニッポン」では、外資マネーによる国内企業の買収や商品の「買い負け」などの問題が指摘されています。実際に丸石・ミヤタ・フジは中台の企業から支援を受け、すでにニッポン企業とはいえない状況にあり、政府が後押ししている欧米企業に自転車部品の「買い負け」も鮮明になってきています。

そして、価格の停滞という点では、他人事ではなく私の店にも同じことが言えます。
開業から18年、修理工賃が上がっていくなどという感覚が想像もできず、当時と同じ価格となっているのです。

1982 osaka cycleshop

 

40年前は修理工賃が組合によって公定されていて、チェーン交換工賃2400円、ペダル交換1200円となっています。

修理工賃は、硬直化どころかむしろ今の大阪の水準を考えると、かなり高いようにも思えます。現在では公定工賃は事実上形骸化し、店舗数の多い大阪は安値競争も激化していて300~500円でパンク修理をしている店もあります。

 

1982 osaka

 

このように自転車小売店を取り巻く環境は厳しさを増しているのですが、加えて半年ほど前から気になる兆候が見えてきています。自転車小売店というのは、洋服店や飲食店などと比べ利益率がもともと良くありません。自転車店は仕入れ価格は一般的には商品の65~70%、価格転嫁できない国内自転車メーカーや部品メーカーから仕入価格を引き上げ要請が盛んになってきていて、なかには85%という極めて利益を出すのが難しい数値を提示されたりしています。

1000円の商品を850円で仕入れ、それに送料800円を負担すると650円の赤字となります。厳しい自転車店の現状を憐れんで「定価販売で少々他店と価格差があっても、パーツを馴染みの自転車屋で注文しよう」と善意を寄せても、このような状況では、店側は売上高は上がっても、経営は真綿で首を締められるように苦しくなるのです。これは少し極端な事例ですが、「安いニッポン」では日本の労働生産性(※2)の低さを指摘、その理由の一つが価格付けの安さだとしています。

同書は日本の製造業や価値観の「危機感」と煽る内容となっていて、思った以上に読みごたえがありました。本ブログではこれから「価格」にも注目しながら、国内外の自転車パーツを紹介していきたいと思います。

 


※投稿の価格は税抜です
※労働生産性=付加価値額 ÷ 労働者数

 

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