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2022年10月の記事一覧

女性のレインコート320枚、怪盗「かっぱ男」依田淑雄(51)逮捕

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本ブログでは以前に大阪は人身事故や放置自転車数が全国ワーストである投稿をしました。人口が多く、自転車の保有率が全国2位の大阪は不名誉にも自転車関連の犯罪が多く、自転車盗難率も全国ワーストとなって、街頭犯罪の80%が「自転車盗」となっています。これは「ひったくり」の60倍で、大阪の警官は自転車の盗難の書類作りが日課となっている状況なのです。

 

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大阪市中央区の街頭犯罪  自転車の盗難が大半をしめている

 

大阪府は2008年に橋下知事(当時)が「街頭犯罪 全国ワースト1」の返上を表明、自転車盗「脱ワースト1」を公表していましたが、2014年に大阪府警による組織的統計偽装が発覚、全65署おいて8万件の街頭犯罪のを過少計上し、統計偽装に関わった90人の警官を口頭注意など処分をしています。8万件のうち45%占める3万7000件の自転車盗を統計に加えると偽装期間の2008~12年も全国最悪で、防犯登録所である弊社にも「警察が被害届を受理してくれない」などのクレームが寄せられていました。

 

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戦後最大の集団偽装事件、大阪府警による組織的治安偽装 産経新聞 2014年7月31日

 

 

 

自転車には「防犯登録」が義務付けられていて足が付き易いため、最近ではライトなど付属している部品を盗み、インターネットオークションやフリマアプリで売却する手口が横行しています。特に、電動アシスト自転車のバッテリーを狙った被害が急増していて大阪府は警戒を呼びかけています。

サイクルショップ203では、常時30種100錠以上の自転車錠をストック、「iPhoneを探す」で位置が分かる最新のバイクファインダーknog「SCOUT」も店頭販売しています。街頭犯罪ワースト脱却のためにも、ぜひ愛車に「SCOUT」を装備するなど自衛策をお願いいたします。

 

そしてまたしても、我が街大阪でとんでもない窃盗犯が逮捕されました。

 

「かっぱ男」窃盗疑い逮捕 320着押収

自転車のかごから女性用の雨がっぱを繰り返し盗んだなどとして、大阪府警阿倍野署は22日までに、窃盗などの疑いで大阪市東住吉区、会社員依田淑雄容疑者(51)を逮捕、追送検した。自宅から雨がっぱ約320着を押収。雨がっぱばかりを狙う手口から、捜査員の間で「かっぱ男」と呼ばれていた。  

署によると、依田容疑者は「女性の肌に触れる雨がっぱを見ると、下着と同じような感じがして興味があり、2009年ごろから始めた」と供述。雨天時に雨がっぱを着た女性の後を付けたり、止めてあった自転車の前かごに干されていた雨がっぱを物色したりしていた。  (共同通信 2022年9月22日)

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▲毎日新聞 大阪版 2022年9月23日

 

窃盗の疑いで逮捕・送検された東住吉区桑津1丁目の新聞配達員・依田淑雄容疑者は、2013年12月から今年5月までの間、大阪市や東大阪市で雨の日に女性のあとをつけ、脱いだレインコートを盗むなど、100件以上の窃盗を繰り返し、警察は「かっぱ男」として男の行方を追っていました。

依田容疑者のように定期的に現れるパラフィリア障害とみられる自転車部品盗は、今までサドルに限定されていたため、自転車の前カゴに入ったレインコートという社会通念から大きく逸脱した異常な性的嗜好には困惑してしまいます。また、2020年に発覚した須田広昭による大量サドル盗難事件と犯行時期・エリアが重なることから、両者は地下で熾烈な犯行合戦が繰り広げていたということとなり、大阪府警にとってはまさに汚名返上となる逮捕で、地域に住むの女性はようやく安心して眠れます。

 

 

こうした収集癖が起こす事件はたびたびニュースで目にしますが「変態」や「フェチ」などと一言で片づけられ、なぜ窃盗を起こすのかという本質に迫ることはありませんでした。文筆家のインベカヲリ★氏は、2013年に横浜で発生した連続サドル盗事件で逮捕された近藤丈司(35)を取材、メディアが事実を大げさに歪曲し近藤を異常性癖者のように報道されたことを不服とし訴状が提起されている事実を明るみにし、コメントを得ることに成功、「新潮45」(2016年4月)に投稿しました。

 

 

「新潮45」によると2013年神奈川県横浜市にて自転車のサドルを200個を盗んだとして35歳の男が逮捕、1日平均3~4個、最高で8個のサドルを盗んだとしています。

 

「匂いを嗅いだり舐めたりした」
「サドルに若い主婦の股部が付いている姿に興奮し舐めてみたいと思うようになった」

 

男は自慰行為によってたまらなく性欲が満たされ、次々に盗むようになったと供述しているとしています。神奈川県警は2012年12月頃から県内で自転車のサドル盗事件が頻発していたため、プロジェクトチームを編成し捜査、狙われるサドルはベビーシートが付いているなど一目で女性が使用していると推測ができる自転車であるという共通性があり警戒を強めていました。

 

男はその後に不起訴となり、報道したメディア6社と神奈川県に対し深刻な名誉毀損を受けたとして提訴、

「サドルに対して性的な興奮を覚えるフェチではない」
「盗んだサドルの匂いを嗅いだり舐めたりしたことがあったのは事実であるが、それが盗みの目的ではなかった」

男は犯行の動機は行きつけの日焼けサロンでの「人間関係のストレス」であり、性的な目線は一切なくテレビ報道で「仰天!サドルフェチ男」などと陳列された200個の押収品の映像とともにデフォルメされた報道に不快感を持ち、さらに2015年に受けた知能検査で成人の平均がIQ100に対し、それをはるかに下回るIQ50という知能指数の低さに苦しみ通院歴があり、薬物治療を続けていることを神奈川県警が発表しなかったことで記事が不本意に拡散したとしている。これに対し、県警は普通免許を所持している点や犯行の際に指紋を残さないように黒手袋を着用している点などから「責任能力がない訳ではない」としています。

犯行時の精神的疾患や障害の程度は分かりませんが、犯行が狡猾で計画性があり逮捕時の供述を修正しているため近藤の主張を受け入れるにはさらに詳しい説明が必要となります。また、近藤は革製品が好きでサドルの「革」のにおいや質感がたまらないと供述していようですが、ママチャリ用のサドルはポリウレタン製の合成皮革であり本革ではありません。ストレスが原因で「サドル盗」を引き起こすという心理も極めて難解です。真相は分かりませんが、自転車店という立場から見ると近藤が変態かどうかは問題ではなく、自転車製品を繰り返し盗むことが大迷惑で許しがたい行為なのです。

「かっぱ男」こと依田淑雄が今後どのような処罰がくだされるか、本ブログでも注目していきたいと思います。

 

 

<自転車関連の街頭犯罪事件簿>

① 2013年4月 横浜 サドル盗事件 近藤丈司(35)
② 2019年10月 東京 大田区 サドル盗事件 羽鳥秋夫(61)
③ 2018年6月 長野県議 自転車サドル器物破損事件 生出光(28)
④ 2020年2月 トラック運転手 サドル盗事件  須田広昭(57)
⑤ 2022年9月  大阪 かっぱ男事件 依田淑雄(51) ←New

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【ケース①】近藤 丈司

女性の自転車のサドルを盗んだとして、神奈川県警山手署は24日、窃盗の疑いで、横浜市中区立野、無職、近藤丈司(じょうじ)容疑者(35)を逮捕した。

1月ごろから、女性が使っているとみられる自転車から革製のサドルだけを選んで盗みを重ねていたといい、同署は自宅からポリ袋に入ったサドル計200個(計120万円相当)を発見、押収した。(2013年8月25日 サイクリスト)

 

 

【ケース②】羽鳥 秋夫

自転車のサドルを盗んだとして、警視庁蒲田署は窃盗の疑いで、東京都大田区南六郷、アルバイト、羽鳥秋夫容疑者(61)を逮捕した。同署によると「去年の夏ごろにサドルを盗まれて買い直し、他人に同じ思いを味わわせてやろうと、腹いせに盗むようになった」と供述している。

自宅からサドル159個を押収。羽鳥容疑者が自転車の前かごに複数のサドルを入れて走行する姿が防犯カメラで確認されており裏付けを進めている (2019年10月3日 産経ニュース)

 

【ケース③】生出 光

長野地検は21日、器物損壊罪で元長野市議の生出光容疑者(28)=長野市伊勢宮=を起訴した。認否は明らかにしていない。起訴状によると、生出被告は1月30日午後11時50分ごろ、市内の住宅敷地に駐輪されていた自転車のサドルに体液を付けて汚し、損壊したとしている。器物損壊容疑で5日に逮捕されており、同7日に市議を辞職していた。一方、県警長野中央署は21日、強制わいせつの容疑で生出被告を再逮捕した。逮捕容疑は4月19日午後7時40分ごろ、市内の路上で、通行中の10代の女性の身体を触るなどしたとしている。関係者によると、生出容疑者は、いずれの事件についても、容疑を認めているという。(産経ニュース 2018年6月21日)

 

【ケース④】須田広昭

大阪府東大阪市で自転車のサドルを盗んだとして、河内署は28日までに、窃盗の疑いで静岡県沼津市、トラック運転手須田広昭容疑者(57)を逮捕した。署によると「約25年前に仕事のストレス解消で東京や大阪で盗み始め、収集がだんだん楽しくなった」と容疑を認めており、署は須田容疑者が借りていた貸倉庫からサドル約5800個を押収した。

 署によると、これだけの量のサドルを押収するのは異例。大半は一つずつポリ袋に入れられて保管されていた。須田容疑者は各地をトラックで回りながら、都市圏を中心に、行く先々でサドル窃盗を繰り返していたとみられている(2020年2月28日 共同通信)

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皇統と稲作で読み解く「前方後円墳」の謎 ~ 古墳巡りサイクリング ~

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季節も良くなってきたので、サイクリングで堺市に古墳巡りに行ってきました。

大阪市の中心部から南に20km、大和川の南岸には今から1500年以上前に造られたとされる大小多くの古墳が現存しています。大仙古墳など巨大な前方後円墳や陪塚は、2019年には「百舌鳥・古市古墳群」として大阪府下で初めての世界文化遺産に認定され、再注目されています。

 

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世界文化遺産に登録された大仙古墳

 

古墳時代はまだ文字がなく、中国が内乱期で当時の日本を記した文献もないため「空白の四世紀」とされ、なぜこのような巨大な古墳が造営されたのか未だに良くわかっていません。私が初めて百舌鳥・古市古墳群について知り、この時代に興味を持ったのは「キン肉マン」という格闘プロレス漫画で、自身の左腕を鍵にして前方後円墳に突き刺し、悪役レスラーを弱体化させるという、伏線なしの衝撃のクライマックスシーンのくだりです。作者「ゆでたまご」の嶋田隆司さんは大阪出身、荒唐無稽でスリリングな世界観は「ゆで理論」と言われ連載終了後もファンから礼賛されています。

 

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▲ 富士山麓に突如出現した前方後円墳に左腕を刺すキン肉マン 23巻「わが身を捨てて鍵となれ」より

 

「ゆで理論」では前方後円墳は地球を活動させたり停止させたりするための鍵穴とされていますが、鍵のような形状になっている墳丘は「穴」ではなく実際は土が盛られ凸型で、しかも巨大です。そもそも、この時代にはまだ日本に鍵は伝来していないため、歴史学や考古学的にも仰天のフィニッシュホールドです。「ゆで理論」以外にも、この時代においては「騎馬民族征服王朝説」や「日本ユダヤ同祖論」などユニークな考察がされていますが、文化遺産登録後も本格的な発掘調査は許可されず、いまだに多くの謎を残しています。

それにしても、これほど大きな古墳を一体、誰が、何のために、どうやってつくったのでしょうか。現地に行けばなにか謎を紐解くヒントがあるかもしれません。

 

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百舌鳥と古市古墳群の間に位置する「大泉緑地」 広大で誰でも利用できるBMXコース

 

古墳群は百舌鳥古墳群と古市古墳群の2つに分かれていいます。両古墳群は5kmほど離れていて、その間には広大な敷地の府営緑地「大泉緑地」があります。緑地内には無料で誰でも利用できるBMXのダートコースがあり、南側には田園風景が広がっています。

前方後円墳は上空から見ると確かに鍵穴のような形状にみえますが、真横から見ると全貌が分からず陵墓は木が生い茂る小高い丘で、外濠はただの水路のように見えます。世界遺産になってまだ時が浅いためか、大仙古墳の周囲ですらまだ観光向けの再開発が本格化しておらず、昭和時代の老朽化したラブホテルや文化住宅が残っていています。

 

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水路の様に見える「大仙古墳」の外濠  

 

大仙古墳はエジプトのピラミッドより巨大で、推計によるとを当時の土木技術で築造すると工期は15年以上、作業員数は延べ680万人だそうです。盛り土の総容量は140万㎥以上、これは10tダンプ25万台分で周濠の切削残土だけでは半分ほどにしかならず、周辺から墳墓のために膨大な土が集められたということになります。これほど多くの労働力を賄うためには水や食料が必要となり、狩猟採集だけでなく稲作などの農耕が行われていました。

稲作農業には灌漑施設が必須となるため、前方後円墳の周濠は農業用水の確保のために掘削されたとも考えることもできます。つまり一帯を共同事業で農地の開墾をした副産物が古墳で、主目的は水田稲作だったのではないでしょうか。大泉緑地の南側の水田地帯には世界遺産指定の古墳はありませんが、その代わりため池が点在しています。大仙古墳周辺も昭和期までは水田地帯で、現在も奈良県の一部では周濠の水を農業用水に利用しているようです。

 

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大泉緑地の南側に残されている水田地帯

 

自宅にもどり図書館で調べてみると、稲作のために古墳を築造したという説は全く無い訳ではありませんが、通説では周濠の水を灌漑利用しだしたのは中世以降という見解が有力のようです。農業土木の技術者である田久保晃氏は考古学や歴史学の常識とはまた違ったアプローチで独自考察、著書「水田と前方後円墳」(2018, 農文教プロダクション)にて、前方後円墳は、墓であるとともに、その周濠が溜池として機能していたとしています。ピラミッドは農閑期の公共工事としての役割を担っていたそうですが、前方後円墳もきっと同様の役割を果たしていたのでしょう。

 

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水田に囲まれている昭和期の大仙古墳 山根徳太郎「難波王朝」(学生社,1969)より

 

巨大な前方後円墳も大化の改新以後は薄葬令が出され姿を消していきます。大化の改新では首都が難波宮に遷都されます。難波宮は8月にも本ブログで取り上げましたが台地の上にあり、当時は半島で一帯は水田利用された地歴がありません。政治の中枢と農地が離れた場所になったため天皇が直接的に農地開発する農本的思想から律令体制に移行、農地の中心である古墳に価値を求めなくなり、簡素化していったのではないでしょうか。

大和民族は端的に「皇統」と「米」の民族といえます。大化の改新以降は大和川水系を離れ、長岡京や平安京など琵琶湖~淀川水系に首都を設置することが多くなりますが、現在でも宮中催事で新嘗祭などの収穫を祝う儀礼が執り行われています。

謎が多い古墳時代ですが、世界遺産の登録は今後の調査・研究を活発にするきっかけとなり、新しい発見があるかもしれません。堺は国内輪業の中心で仕事柄行く機会が多いので、また新発見があれば行ってみたいと思います。

 

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シン公営競技論:Q

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シン公営競技:序
シン公営競技:破
の続きです。

– – –

競輪は国内では公営競技として70年以上の長い歴史を有していますが、同時に競技スポーツという側面も併せ持っています。日本のプロスポーツとしては国内最多の2000人以上の選手が登録され、2000年からはシドニー五輪からは正式種目に採用されています。日本発祥スポーツの五輪種目は柔道・競輪・空手(東京五輪)の3つで、海外でもそのまま「KEIRIN」と表記されています。

日本はKEIRINの母国でプロ選手も多く抱えていますが、これまで北京五輪で獲得した銅メダルが1個のみで金メダルはありません。かつて日本選手はトラック競技において世界選手権で圧倒するほどの成績を上げていました。当時の五輪は創始者クーベルタン男爵の提唱する「アマチュアリズム」を標榜しており、プロ選手が参加できませんでした。五輪は時代と共に商業化を強め、徐々にプロに門戸を開くようなっていきます。

日本の競輪選手が所属する「JKA」はオートレースと競輪の2つを管理する公益法人です。サッカーではJFA(日本サッカー協会)はFIFAの影響下にありますが、JKAは元々経済産業省所轄の団体で国際自転車競技連合「UCI」の関係先ではなく両者は目指す方向性に大きな違いがあり、協調しあって自転車競技の振興をしている訳ではありません。

UCIは2000年に自転車トラック競技の大改革を断行し、その際に日本はKEIRINを正式種目に入れ込むことに成功しました。同時にトラック競技のルールが変更され、1周250m板張りの「ベロドローム」と言われる室内競技場と厳格化されました。しかしながら、日本にはこの規格の公認競技場がなく参加選手はオーストラリアで合宿をするなどして五輪に挑んみましたが、新ルールに対応することがなかなかできませんでした。ルール改正に伴い、欧州各国・米国・カナダ・豪州などの先進国は公認ベロドロームを設置、中国・ロシア・香港・インド・イスラエル・コロンビア・トルクメニスタン・マレーシアなどでも国際大会が実施されています。母国日本はルール改正から遅れること11年、静岡県の伊豆半島の山中に「伊豆ベロドローム」がようやく完成、大きな大会を実施するにはアクセスが悪く、主に選手の練習場となっていました。

 

「お・も・て・な・し」

 

「世界一コンパクトな五輪」を公約にし東京都は2020年の五輪招致活動を行い、ブエノスアイレスの総会にて競合の末に見事に大会を勝ち取りました。猪瀬直樹都知事(当時)は、東京数キロ圏内に競技会場を集中させ、自転車競技のトラック種目は東京湾の臨海地区に20億円をかけ専用競技場「有明ベロドローム」を建設するとしていました。

しかし、小池百合子知事になるとこの計画の見直しを提言「これまでも会場の変更というのはしばしばあった」とし、有明の競輪場も白紙となります。伊豆のベロドロームはサッカーでいうなら「Jビレッジ」のような強化施設のため、五輪のような大きな国際大会を実施するには大規模な改修が必要となり、代表選手は実践を想定した練習ができずに2月の冷たい雨の中で屋根のないコンクリート走路で直前合宿をしいられました。東京五輪の反省点から分かるように、日本に必要なのは国際規格のベロドロームなのです。現存する40以上の競輪場は賞味期限が切れていて、新規格の競技場に更新していく必要性があるのです。

 

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白紙となった夢の競輪施設「ベロドローム有明」

 

競輪は誕生から70年以上が経過、施設は老朽化が進み、最盛期で全国に62あった競輪場も43施設となりました。減少した施設のほぼ半数は関西の施設で、革新自治体の首長による政治的判断によるもです。このような共産体制レジームは消滅しましたが、競輪を再開した自治体はひとつもありません。東京都の石原慎太郎知事(当時)が「新しい競輪」「お台場カジノ計画」構想を表明しましたが実現にはいたりませんでした。しかしながら、石原の意思は受け継がれ2018年にはカジノを含む統合型リゾート(IR)の整備法が成立、大阪は関西大阪万博が開催予定の人工島「夢洲」にて一体的な開発を行う予定となっています。

 

 

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 2025年夢洲で開催される「大阪・関西万博」 開催には競輪の協賛金が支出される

 

大阪は古くから自転車産業の中心的な役割を果たしてきました。また、自転車の普及率や利用状況も、欧州の「自転車都市」に引けを取らない高い水準となっていてます。競輪史においても住之江競輪場の熱狂的な人気が、全国へと拡大した経緯を見てみても、関西初の屋根付きのベロドロームは大阪にあるべきなのです。

とはいえ、大阪は財政的に困窮していた時期が長く緊縮体制を取っているため、競輪場の建設に対して公共政策として予算を組むとなると反対する意見も多く出てくるはずです。2000年以降に国内に建設された屋根付きの競輪施設は3施設ありますが、どれも税金は1円も使用されていません。小池知事は建設費を問題として、有明の施設を撤回しましたが、少し知恵を働かせれば税金を使わず施設を建設できるのです。

私が万博後の夢洲でKEIRINを実施すべきであるとしているのは、万博で建設されるパビリオンを競輪場に転用することで、税金を使わず「負のレガシー」を収益事業に変換することができるからです。カジノが開業すると国内外から収容できないほどの多くの観光客が訪れます。カジノは席数に限りがありますから、あふれ返ったギャンブラーたちをターゲットに日本独自の公営競技を楽しんでいただければ一石二鳥ですし、休催日にはボクシング・アイススケートやコンサートなどのイベント会場として貸し出せば、一層の収益を出すことができます。

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競輪の人気のピークは1950年代でファンも高齢化し、一般的には昭和の終わったコンテンツと認識されているのではないでしょうか。ところが令和になり、米国でスマホを介したスポーツベッティングが流行の兆しを見せると、ソフトバンク・サイバーエージェント・楽天・DMMなどのIT企業が相次いで事業として競輪に投資、売り上げも底を打ちイメージも変わりつつあります。ゴジラやウルトラマンが新装し再ブームを起こしているように、競輪も少しテコ入れをすれば新たなファン層を獲得し、世界から本場の競輪見たさに来日客が訪れ、他国のカジノと差別化にもつながります。

大阪からは、野球のダルビッシュ有選手、テニスの大坂なおみ選手、サッカーの本田圭佑選手など多くの一流アスリートが生まれています。これは自宅の近くに練習施設ある環境で幼少期を過ごした結果です。静岡の伊豆まで電車を乗り継いで行く必要がないのです。ベロドロームは、スポーツ振興という面でも、遅かれ早かれ設置しなければなならいのです。

「シン公営競技」と題して公共政策としての公営競技について妄言を交え3回にわたり投稿させていただきました。夢洲のカジノには賛否があることは承知をしていますが、印象として反対派も賛成派もギャンブルの現状を正確に認識して声を上げている訳ではなく、ポジショントークをしているだけのように感じます。私は、より深い議論をするため、本稿で述べてきたような歴史的経緯やギャンブルに対する正しいリテラシーを各々が身に着けていくべきではないかと思っています。

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