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底冷え京都、官民連携「大宮交通公園」

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今月初めにおこなわれた京都市長選は、維新が候補者の推薦を取り下げ、実質「共産vs非共産」という構図となり、自・公・立憲・国民が支持した元内閣官房副長官の松井孝治氏が当選、4期16年務めた門川大作氏に代わり新しい市長となりました。京都市は深刻な財政難・人口流出・オーバーツーリズム(観光公害)など問題が山積みで、新市長の手腕が問われています。

 

 

京都は1950年から7期28年にわたり革新系知事が政権を担い、日本共産党が伝統的に強い地盤があり、本ブログではこの体制から脱却し財政健全化の道筋を立てることが最優先で、具体策として高山義三市長が廃止した市営の宝ヶ池競輪の再開をすべきであると主張しています。

 


競輪場があった宝ヶ池公園 子供の姿はなく野生の鹿が生息

 

競輪場跡は現在、中学生以上の入園を禁止した「子どもの楽園」という施設となり、保護者以外の大人が利用できない公園となっています。この園の利用料は無料で、運営には年間3200万円かかり、隣接の駐車場からの収入1500万円を差し引いても、市民一人あたり64円の負担となっています。これはわざわざ調べたのではなく、どういう意図なのか分かりませんが、楽園の入口に目に付くように掲示されていました。雪のちらつく1月、寒さのせいか子供はおろか人の姿も全くありませんでした。

 


宝ヶ池公園の「子供の楽園」年間3200万円、市民一人あたり64円の負担となる

 

政府は公園施設の財政負担を軽減するため、公園運営を民間事業者に委託する制度「パークPFI制度」を法改正により導入、財政難の京都市でも新制度を活用し北区の「大宮交通公園」が2021年にリニューアルされました。

 


パークPFI制度を活用した「大宮交通公園」

 

大宮交通公園は昭和40年代からゴーカートで遊べる施設として親しまれてきた都市公園で、京都市民が交通ルールを学べる市内唯一の交通公園となります。リニューアル後はゴーカートは廃止され、信号機が設置された自転車ルールを学べるようになりました。公園改装費4.6億円の半分は民間事業者の大和リースが負担、テナントやコミュニティルームを設置し、官民協働により再整備されました。

 

 

大和リースは大和グループの企業で、年間160万円を京都市に支払い公園を運営します。民間企業側はガイドラインに基づいて、駐車場利用料やテナントを誘致して家賃収入などで維持管理するスキームとなっています。園内の伐採した木を再利用した腰掛や遊具など、到底お役所仕事ではできないような雰囲気で、入り口に鬼気迫る怪文書が掲示されていた宝ヶ池とは大違いでした。

 

 

 

寒い一日でしたが園内にはSDGsを意識したカフェがあり、木漏れ日のなかで入れたてのドリップコーヒーが味わえ、普通の児童公園とは全くことなる特別な場所となっています。訪問日は平日でしたが、土日には定期的にキッチンカーやマルシェなどイベントが開催され地域の交流の場所となっているようです。

 

 

公園のリニューアルとあわせて敷地内に消防署を移設、放水訓練や消防車の出動を園内のデッキから見下ろすことができるようになっています。災害時には避難者救護のための応急設備やマンホールトイレも新設され、いざという時の避難場所に指定されています。

 

 

レンタル自転車も4事業者がポートを設置、園内のサイクリングだけではなく、少し離れた金閣寺や上賀茂神社など観光にも利用できます。驚いたのは、テナントとして自転車店の出店があり、自転車の販売・修理もおこなっているようでした。このお店は、自転車技士の私から見ても信頼できそうな立派でおしゃれな外観で、交通公園の要となり、周辺地域のクオリティ・オブ・ライフを高めていました。

 

 

ただ、京都市の人口流出はこの公園の完成後も続いています。この難局を打破できるのか、新しい市長の一挙手一投足に注目です。

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1万人収容アリーナは、なぜ京都市ではなく人口6万人の向日市なのか

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大阪にはシマノ・ブリヂストンサイクル・ジャイアント・あさひといったいわゆる自転車業界とは別に、もうひとつ裏の自転車業界が存在します。それは怪盗団「アパッチ族」といった鉄くず収集業を源流とした北鮮系在日コリアン経営の中古自転車チェーンで、追随する新華僑によるチャイナシンジケート系中古自転車店と地下で激しい中古自転車の争奪戦が繰り広げられ、互いに大きな勢力になりつつあり、最大のチェーン店では34店舗を展開しています。

 

【参考】大阪市、撤去自転車売却「6万台」の闇 (2022年1月18日投稿)

 

これら中古自転車の主な供給元は、各自治体が撤去した引き取り手のない放置自転車で、本ブログではこれまでこの循環について、批判的な立場で実態の調査・考察してきました。物価上昇や貧困化で高まる中古自転車需要に応えるため、業者は大阪のみならず遠方にまで入札に向かい、集められた自転車を「山」という単位で取引しています。業者の有力な遠征先は、大学生が多く4年程度使用された良質な中古自転車が多い京都です。関係者に話を聞くと、大阪の山は「中古の中古」で、割に合わないといいます。全国で唯一中心部に国立大・総合大学が一校もない大阪と、大学進学率1位の京都はあらゆる面で相互依存関係にあるといえます。

 


北朝鮮に輸出される中古自転車 [京都・舞鶴港] 読売新聞 2003年6月14日

 

大阪市民としては学びの機会が多い京都は恵まれた環境のように思えますが、それはそれで大変なようで少子化などの影響で、京都市は年間で1万人以上の人口が減少し2年連続全国ワースト1位となり、財政状況が夕張市に次ぐ悪さで予算不足となり破綻の危機が迫っていると報道されています。

京都府は京都市内の振興策として左京区「北山エリア」の再整備を立案、老朽化した植物園や府立大学を建て替え、文化・学術・芸術・スポーツに触れられる空間の創出と地域の活性化を目指し、大型屋内施設の建設を計画しました。計画では耐震基準を満たさない学生数2000人の府立大の体育館を建替え、府民も一般利用できる1万人収容の大型スポーツアリーナを建設、文化イベントや学生スポーツの拠点として新たな交流エリア実現を目指すといったプランでした。国際的なイベントやコンベンションを実施するにあたり、スポーツ庁は全国に大型アリーナを20ヶ所ほど新設する計画で、大型施設のない京都府は候補地となり市内の活性化として一体となった構想計画です。

 

 


▲建替え検討されている築54年「京都府立大体育館」

 

 

ところがこの計画に対して、日本共産党京都府会議員団など5つの団体が署名活動など反対運動を展開、住民説明会では、レストランや売店の設置や敷地内の木を伐採を巡り議論は紛糾、オンライン書名サイト「change.org」では、「京都府立植物園が危ない!生きた植物の博物館の存続にあなたのお力をお貸しください!」と反対署名6.5万以上集めています。

 

 

 

一方で、京都府バレーボール協会など府内の6つのスポーツ団体は、京都市内ではなく京都府南部の人口6万人の向日市の向日町競輪場の敷地内にアリーナを建設するよう府知事に要望書を提出、「周辺環境との調和やアクセス面で、より望ましい」と説明しています。屋内競技団体の請願に対して、西脇隆俊知事は猛烈な反対が展開されている北山エリアに比べ向日市は周辺住民も整備のメリットを感じているとして「スピード感をもって検討を進める」と応じました。

 

 

京都には現存の府営の向日町競輪場とは別に、北山エリアの北東側の宝ヶ池公園内に市営の「宝ヶ池競輪場」があり、市の財政に寄与してきました。しかしながら、同エリアは歴史的に日本共産党の影響力が強く、同党が支援する高山義三市長(当時)が廃止を決定、市の財政状況のみるみる赤貧化し、現在にいたっています。

向日町競輪場も廃止こそ免れているものの全国でも最も悲惨な管理状況にあり、存廃を含めた議論が行われていました。アリーナ建設は抜本的な改革が必要な同施設にとって渡りに船の妙案で、誘致によりこれまで全く見向きもされなかった老朽施設の改善計画が急進する可能性が期待できます。

 

【参考】「京都向日町競輪」の存廃問題  (2023年4月13日投稿)

 

向日町競輪場は2025年に開催される「第24回全国障害者スポーツ大会」の委託会場になっています。この大会は持ち回り制でお隣の滋賀県の主催ですが、同県は2011年に競輪場を廃止し全国で唯一競輪場を保有していない都道府県で、滋賀のパラアスリートにとっては複雑な心境なのではないでしょうか。(個人的にはあまりパラスポーツは興味ありまませんが)いずれにしても、エレベーターや洋式トイレなど大規模な改修が必須といえます。

 


老朽化による廃止が検討されている「向日町競輪場」

 

門川大作市長の退任により、京都では現在、次の市長に向けた各党の候補者選びが本格化しています。先月の奈良県の投稿でも述べましたが、老朽施設を生かすも殺すも行政次第で、京都市民はこれまでのやり方が限界であり、市営競輪復活による財政健全化を最優先すべきではないでしょうか。

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「京都向日町競輪」の存廃問題

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京都唯一の競輪場「京都向日町競輪場」に行ってきました。

京都府向日市は京都府南部の大阪と京都市の中間に位置する小さな市で、府が1950年から競輪を実施しています。少しややこしいのですが「向日町競輪」(むこうまちけいりん)といっても町営ではなく府営で、しかも自治体も1972年から向日となって名称だけ残っています。古くは長岡京として首都として機能し、現在は西日本最小の市ながら府下でも屈指の行財政で、近畿圏でも屈指の高級住宅地となっています。

 

muukou

 

京都には向日町ともう一つ京都市営「宝ヶ池競輪場」というのがありましたが、1958年に市議会にてギャンブル施設に頼る市政に批判が高まり、たった99日という開催日数で廃止を決議、京都市の財政は真綿のように締め付けられ、府と市の財政状況の明暗を分けています。

 

mukomachi

 

向日町競輪場は阪急「東向日駅」の西側500mにあり、JR「向日市駅」からも徒歩圏で無料の駐車場もあります。入場料は50円、走路は400mの屋外型でナイター設備も完備され、ミッドナイト競輪も実施しています。私が行った3月15日は競走開催日でガールズケイリン(女子競輪)も実施されていましたが、観客席も混みあうことはなく感染症対策もばっちりでした。

 

velodrome

 

このバンクは歴代勝利数1位の通算1341勝「競輪の神様」とされた松本勝明がホームバンクと使用し、功績をたたえ同氏の名を冠した特別競走が実施され、敷地内には通算1000勝を記念した桜の木が植えてあr…あった形跡の切り株がありました…

 

matsumoto

 

 

敷地内には売店などがあり、お茶などが無料で飲むことできます。キャッシュレスには未対応、案内や券売機も日本語にしか対応していないようです。まあ、観客は60歳以上の日本人の男性ですのでそれでもいいのかもしれませんが、それより気になるのは劣悪な施設の管理状況です。

 

 

keirin kyoto

 

塩ビ屋根は破け、壁のペンキは剥がれ、バラック店舗のトタンは錆々、舗装はガタガタ、階段はブロックが崩れ、ところどころ規制線が張られ閉鎖状態で公共施設と思えぬ退廃感があります。ノスタルジーを感じるというより「危険」を感じるほどで廃屋化寸前の状態です。

 

velodrome kyoto

 

競輪の収益というのは、税収外収入として主催自治体の一般財源として活用され、施設維持は議会で決定された予算内で行います。売上金をまず施設維持費に活用できればいいのですが、サッカーや野球場と異なりギャンブル施設の競輪場は「迷惑施設」とされ、優先的に予算を組む政策になかなか合意を得ることができません。このような状況下で、最盛期には60施設以上あった競輪場は廃止が相次ぎ43施設に減少、関西圏は特に厳しい政治判断が下され10競輪場が廃止され、ほぼすべての施設が解体され跡形もなくなっています。

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<近畿の廃止・休止の競輪場>
※カッコ内は廃止年

鳴尾競輪場  (1950)
豊中競輪場 (1955)
宝ヶ池競輪場(1958)
神戸競輪場(1961)

明石競輪場(1961)
大阪中央競輪場 (1962)
住之江競輪場 (1964)
西宮競輪場 (2002)
甲子園競輪場 (2002)
大津びわこ競輪場 (2011)

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kyoto keirin

 

このような窮状を受けて、2003年より自転車競技法が改正されプロポーザル方式で一部の業務が民間に委託することが可能になり、一般企業が施設の運営に参画できるようになりました。向日町競輪は公営競技の写真判定システムの事業を手掛ける株式会社JPF(日本写真判定)が受託、BMXパークの設置や地元の向日市激辛商店街と「KARA-1グランプリ」を開催するなど収益が健全化しました。

2007年にJPFの代表に就任した渡辺俊太郎弁護士は慶応義塾大学法学部卒で、自転車事故の紛争処理を仲介する自転車ADRセンターの委員や日本サイクリング協会の理事も務め、同社の社長だった父親の死去に伴い役員となり早稲田大学大学院にて競輪場が果たす役割について研究、「勝利」「普及」「資金」の好循環がスポーツ繁栄につながるという「トリプルミッション」というスポーツ経営理論から競輪を分析、向日町を合わせて計6施設を黒字運営しています。

 

barracks

 

全国の競輪場では、地方債か積み立てによって基金を設置、ほぼすべての施設において平成期までに大規模修繕工事が実施されていますが、向日町は全国で唯一「基金がない」という無計画な管理体制に有識者からは改善が提案されています。

運営受託のJPFも、2021年の千葉競輪場の建替の見積もりに誤算があり、見込みでは総工費60億円のところ100億円を超え、赤字負担を千葉市に請求できない契約から所有していた貸しビルを売却し資金を工面、新競技「PIST6」(千葉競輪 250)を実施するもコロナの影響で無観客開催が続き逆風状態となっています。

 

bmx kyoto

 

取り巻く状況次第では2025年以降の運営の条件が整わないことも想定され、全国で最も施設の在り方が問われる競輪場となっています。JPFが千葉競輪場のように全面的に建て替え費用を負担するならよいのですが、公営競技の着順判定という労働集約型の地道な業務から立て続けに100億円の捻出を要望するのは他力本願が過ぎるように思います。

一昨年、奈良競輪場に行った時のブログにも投稿したのですが、私は広島県尾道の県営倉庫をリノベーションしたスポーツ自転車施設「Onomichi U2」のように飲食店や物販店がある複合施設に全面修繕をする方法が最善ではないかと考えています。そのためにはまず50円の入場料を無料化し敷地をオープンスペースとて活用し、大規模修繕のための基金を設立することが絶対条件であると思います。

 

ONOMICHI U2 県営倉庫を改装した複合施設「Onomichi U2」2016年撮影

 

また、JPFの渡辺氏は早大の修士論文にて、競輪場がギャンブル施設としての存在価値が強調され、利益をもたらせなけらば廃止を検討されるという考え方が主流であるという点にも触れています。例えば、野球場は全国に8000施設ほどありますが、阪神の甲子園球場ですら赤字となっています。いわんや、大半の球場施設は利益を生みませんが、自治体が率先して廃止をしていくことはありません。しかし、競輪場は違うのです。

少し誤解を与えかねない投稿になってしまいましたが、最後に、現役の43の競輪場は全施設「黒字」であり、地域経済に大きな貢献をしていることを改めて強調しておきたいと思います。

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