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秋も深まり、木々が色づく季節になってきました。

最近、イチョウ並木で有名な東京の神宮外苑では再開発を巡って、執行停止を求める活動家たちにより裁判沙汰となり物議を呼んでいます。外苑には周回1.2kmのサイクリングコースがあり、休日にはイチョウ並木道やコースを利用した自転車乗り方教室やレンタルサイクル、自転車レースなどが開催され、代議士の谷垣禎一氏が会長を務めていたJCA(日本サイクリング協会)の活動拠点となっていました。また、再開発で最も問題視されている超高層ビル建設予定地には、もともと青山アートスクエアという無料の美術館があり、毎年春には自転車をテーマにした展示を開催していました。

施設の更新や収益化は非常に重要なことですが、自転車産業に関わる者としてはサイクリングコースや自転車展は再開発後も残していただきたいと切望しています。

 


自転車展が定期開催された神宮外苑「青山アートスクエア」(2017年5月筆者撮影)

 

メディアは東京のことばかり伝えますが、大阪でも街路樹の伐採を巡って似たような問題が起こっています。お笑いトリオ「コント赤信号」のラサール石井氏は大阪の街路樹の伐採計画に対し、維新の「身を切る改革」をもじり「木を切る改革」であると怒りのアカ信号を灯しています。毎日新聞によると、大阪市は2022年夏から24年度にかけて街路樹や公園樹を計1万本を撤去する計画のようです。

大阪市では計画的に樹木が植えられ、街路樹の高木の数は政令市では4位の11万本、狭く公園も少ない割には樹木が密集し、植栽後50年近くが経過した街路樹の中には、根上がりによる通行障害や視認障害・視距阻害など、道路走行にも支障が出るケースもあるとのことです。

 

 

2018年9月4日の台風では、瞬間風速50m以上の猛烈な強風が大阪を襲い、街路樹が倒れ通行止めや停電が発生、サイクルショップ203がある「なにわ筋」でも倒木でバス停の屋根が損傷するなど甚大な被害があり、翌朝、出勤するとイチョウの大木が店前に横たわっていました。街路樹は憩いの景観や「都市の肺」としての緑化機能として不可欠なものですが、税金で維持管理する必然性からコストや費用対効果も併せて総合的にマネジメントする必要があります。

 

 

なにわ筋に平行して走る大阪のメインストリート「御堂筋」も4列のイチョウが植栽され維持管理され、欧陽菲菲「雨の御堂筋」に歌われ、名所となっています。市は2019年から御堂筋の道路空間の再整備に着工、6車線のうち2車線を自転車と歩行者の空間に転換する再編を進め、吉村洋文知事は37年までににぎわいと魅力ある街並みの創造のために完全歩道化を目指すとしています。

 

 

このような公共空間として街路を再定義する流れは世界的に見られ、近年の代表的なモデルとしてクルマ社会米国NYのタイムズスクエアの変革が評価されています。ブルームバーグ政権下でリーダーシップをとったジャネット・サディック=カーン交通局長は2019年に来日、東京都の小池百合子知事や京都の門川大作市長と面会、大阪でも御堂筋の取り組みを担当者と共に視察を行いました。

 

「日本に基礎的な自転車レーン網が備われば、自転車人口を容易に倍にしてみせることができるでしょう。日本の自治体のリーダーは、この重要性を認識して、優先的に取り組む必要があります。」

 

カーン女史は日本はサイクリスト(自転車利用者)の数が多く、大阪市はコペンハーゲンやアムステルダム同じくらい素晴らしい自転車都市をつくり出す資産が存在し、今ある街路だけでそれを実現できるとしています。そして、日本の街路を歩きやすく、自転車が乗りやすく、人にやさしいこれまでと違った視点で見る必要性があると言います。NYでは最初から完璧を求めず腰掛を置くなど試験的に街路を変える「パイロット・プロジェクト」を実施、するとタイムズスクエアで雪合戦が自然と始まるなど賑わいだしたといいます。

 


米国の車道に設置された駐輪場「アーバンストリートデザインガイド」全米都市交通担当者協会より

 

 

再整備で自転車人口が倍になるというのは現実性の低い数値ですが、重要なのは自転車レーンが御堂筋だけにとどまらず網の目の様にネットワーク化することだと思います。店の前のなにわ筋は再整備が行われておらず、いまだに歩道に自転車走行帯があります。街路樹のイチョウも2018年の台風で主幹が折れてしまいほとんどの木が自然な樹形が損なわれた状態となっています。なにわ筋のイチョウはヤマトシロアリの大量発生によって蝕まれ大きく活力度が低下、安全のために伐採しているようです。ヤマトシロアリは亜熱帯性の害虫ですが、近年の温暖化で北海道や青森でも被害が報告されるようになっているそうです。もはや生態系は破壊され、毎年6月にはなにわ筋はシロアリの捕食のためカラスとコウモリが集まり異様な状態になっています。

 

 

 

 

私は店を経営している都合、このような状況を2015年から指摘していましたが、毒性もなく外来種ではないと理由で対応はありませんでした。動画や画像を撮影し重ねて役所に出向きようやく殺虫剤の散布が始まりましたが、「害虫駆除の専門家ではないからわからんわ」と作業員の方は口にしていました。本年8月に波紋が広がったBIGMOTOR店舗前の植栽枯死疑惑も、このような行政な怠慢な管理体制が招いた惨事のように思います。

持続可能なまちづくりの実現のために街路の管理や再整備は不可欠ですが、前回も投稿したように大阪は財政的な問題も抱えています。英国の都市の再整備の成功事例を見ると、自治体のオープンスペースの再整備費の64%が公営くじ基金による内訳で税金負担なしでプロジェクトが進められているといいいます。

本ブログでは繰り返しになりますが、大阪府・大阪市は共産主義をこじらせ公営競技場を次々と廃止に追い込んだ黒歴史があります。カジノと異なり、公営競技は国内で100以上の自治体で半世紀以上実施されてきたギャンブルで、依存症対策も規範とできる健全性があります。大阪維新はいつまで共産主義時代の政策を踏襲し続けるのか、大都市なら在って然りの市営・府営の競輪場を早急に復活させ、安定した財源を確保すべきではないでしょうか。