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2020年10月の記事一覧

国内最大級のヴィンテージ自転車部品蚤の市「シクロジャンブル」2025 秋

服部緑地公園で開催のシクロジャンブルに行ってきました。

シクロジャンブルは西日本最大の自転車のスワップミートで1999年から毎年、春と秋の2回開催されています。2025年秋は10月12日、北大阪急行「緑地公園駅」に近い「東中央広場」で開催されました。

 

 

朝9時スタートとなっていますが、9時にはすでに約40ブース出店され盛り上がっていました。出店は協力金1000円を払えば誰でも可能でコレクターから業者など様々な品々が交換取引されています。車体の出品は盗品売買の怖れから制約があるため出品は少なく、パーツ中心で不用品から博物館級の年代物まであり、関西だけでなく中部や関東地方からも日帰り遠征に来ている方も結構います。

私は10時ころにまでいましたが11時以降はあいにくの雨模様でした。

 

 

出品側はプロという訳ではないので雨天の際の用意はほとんどしていないため、事実上の中止となります。また金儲けで来ている訳ではなりませんので、目ぼしい代物がある際は手さげ袋・小銭・メジャー・ノギスなど工具は持参した方がいいかもしれません。

 

 

欲しいものがなくとも、1960年代前半の初期ALEX MOULTON(アレックス・モールトン)や110年前のPEUGEOT(プジョー)のレストア車など品評会クラスの普段目にすることができない貴重なモノが無造作に駐輪されていたりします。

このイベントの運営「NPO法人 シクロジャンブルコミニティ」は本年7月に豊中文化芸術センターでポルトガル映画「サイクリストの魂~ゆっくり走る人々」の上映を企画、予想を上回る来場者が訪れ好評だったことから、来年も同様の自転車関連映画の上映を企画しているようです。

 

 

今回の戦利品は謎の工具、出品者の方に話を聞くとリベットの工具だといいます。サドルやドロヨケの鋲打ちに使えるのでしょうか?? ちょっと分かりませんが、100円だったので勉強代ですね。

 

 

このイベントは趣味人だけでなく周辺コミュニティの活性化の一役を担い、地域のブランディングに間違いなく貢献し、自然発生的な参加型イベントのロールモデルとして今後も継続してもらいたいと思います。イベントは基本的にFacebookやXで情報を発信していますので、詳しいこと知りたければフォローするといいと思います

大阪・関西万博閉幕、「夢洲レガシー」をどう活用すべきなのか

大阪関西万博が閉幕まであと数日となりました。開催前は建設費の収益面や安全面で多くの不安材料があり、開催反対の声も多くみられましたが、来場者2500万人で280億円の黒字、想像以上に評価され期間中に日経平均株価も高値を更新、訪日客も増加しました。

サイクルショップ203のある立花通りは普段から多くの外国人観光客がいるため、万博だからと言って目に見えて変わったという訳ではありませんが、国恥級の東京五輪の惨状と比べてはるかに素晴らしく、意味のあるイベントだったと思います。私は9月の休みに1日だけ行きましたがパビリオンの予約もすべて外れ、とにかく比較的空いているところに入って暑さをしのぐような感じでした。

 

 

一番注目を集めていたイタリア館ではジロ・デ・イタリアのトロフィーとイタリアンロードバイクが並べられ、文化財級のホンモノの展示物に長蛇の列ができていました。イタリア以外も人気パビリオンは2時間待ちはあたり前で入場制限され、行き場を失った人が大屋根リングを歩きまわり記念に写真を撮っていました。

SNSやインバウンドといった言葉もなかった時代の「愛・地球博」がそこそこ成功したのだから、まあそれなりには成功すると思っていましたが、猛暑の中これだけの人が来るのならもう少し開催期間を延長して欲しいと思えるくらい名残惜しさを感じました。

地下鉄のダイヤが乱れ帰宅できない人が発生したり、一部のパビリオンが開幕に間に合わないなどのトラブルはありましたが、開催前から懸念されていたガス爆発、テロ、津波といった惨事はなく、声高に反対していた識者が滑稽に映り、ますます大阪が活気づいたような気がします。

 

 

すぐに入場できたのは自国でパビリオンを出展できない小国を寄せ集めた「コモンズ」であまり耳なじみのない国の原始的な楽器や木彫りのお面などが展示、貧しさから脱っせない非文明地域の展示物はどれも同じに見えました。そんななかでバングラデシュが自転車部品を展示、内製化できる工業力をアピールしていました。

車輪は人類最大の発明の一つであり、国の経済の発展に寄与します。途上国が家内制手工業から工場制手工業(マニュファクチュア)に移行しさらに大きな設備投資をする際にはそれに見合う労働力が必要になり、人員の確保のため遠方からの通勤が必要となります。自転車があれば半径20kmくらいから労働力が確保できるため、経済発展の一里塚は自転車工場、特に消耗品であるタイヤ工場は非常に重要であると言えます。

中国も建国当初は朝の自転車通勤が風物詩となり「世界の工場」となりました。電車や自動車はおろかバイクやガソリンすらない途上国にとって自転車は重要で、いつまでも民族楽器を作っている国とバングラディッシュではどちらが経済発展をするかは明白です。

 

 

万博には公営競技から多額の費用が捻出され、広告や警備などの競輪の補助がなければ開催ができません。しかしながら、大阪府・市は一時期共産主義に肩入れしており、大きな収益を生んでいたにも関わらず迷惑施設として競輪場を廃止、共産主義政権が倒れた現在も施設の再開はありません。

1970年大阪万博の際も競輪資金で世界初の水平型エスカレーター「ムービングウォーク」を設置、日本の輸出品目となり今では世界のショッピングセンターや空港施設などに波及しています。ちなみに中央競馬は大阪は関係ないと協力姿勢をみせませんでした。大阪人が恩知らずなのか、競輪の運営がおひとよしなのか、夢洲にカジノ施設を設置すらなら、競輪場も併設すべきではないでしょうか。

 

 

数兆円を掛けて失笑された東京五輪と比較すると、夢洲を3000億円で新都市のたたき台となるビジョンやインフラ整備をできたことは日本経済にとっては非常に有益で、特に大阪府民・市民にとっては、府市所有の夢洲の土地が高く売却でき、IRなどの新産業の恩恵も受けることができます。

私としては木製の大屋根リングはそのまま競輪場の木製バンク(トラック)に転用して、批判を浴びた建設費2億円の公衆トイレは南堀江に移設して観光ニーズにしっかり対応して欲しいと思います。

 

 

酷暑だったので長くは滞在できませんでしたが、ガンダムの立像が人気だったのでまたアニメ博でもしたらどうでしょうか。夢洲は広大です。今後はどのように跡地が有効的に活用されるのか楽しみです。

グラングリーン大阪の駐輪場問題

梅田北ヤード跡にできた都市公園「グラングリーン大阪」が一部開業したようなのでに行ってきました。

関西最後の一等地とされ再開発が進められているうめきた、大型複合施設「グランフロント」に次いで西側に広大な芝生公園と商業施設・ホテル・オフィスビルなどが段階的に開業し、2027年頃までに全体がまちびらきとなる計画となっていて、関西経済の起爆剤として注目を集めています。

 

grand green osaka

 

ご存じの通り梅田は日本屈指の商業エリアで、すでに多くの商業施設が林立し2010年代にはオーバーストアを懸念されていました。阪急・阪神・大丸の老舗百貨店やヨドバシ・ルクア・HEP等の人気テナントに加えて今夏にはJPタワー「KITTE大阪」や大阪ステーションシティ「イノゲート大阪」が誕生し、関西万博をひかえてさらに拡大しています。グラングリーン大阪は植栽や街並みが見事にレイアウトされ、都市の価値を創出がこれまでにない規模で提案され、ごちゃごちゃした大阪のイメージを大きく変える憩いの空間となっています。

 

 

更地だった5年前、この場所で自転車イベント「BIKERORE」が開催、特設の自転車土走路コースやブースが出展され、開放的なアウトドア空間に多くの人が魅了されていました。もともと国鉄の操車場だった広大な敷地が、すべての人を受け入れる都市機能を備えた理想的な空間となっています。

ミナミや京都と比べてインバウンド需要を取り込めていなかった梅田、忽然と姿を現したユートピアで巻き返しとなるのでしょうか。

 


自転車イベント「BIKERORE」会場となったうめきた   2019年3月撮影

 

 

JR北側の開発が盛んな一方で南側の「ブリーゼブリーゼ」「E-ma」などのファッションビルに空きが目立ち、阪急線を挟んだ東側の茶屋町もLOFTが閉店を発表するなど勢いを失っています。再開発はまだ中途で、公園もつくりかけなのでなんともえいませんが、南港「ATC」やJR難波「OCAT」のように予定通りに開発が進まず不採算化した事例もあり、期待通りになるのか注視したいです。

一般的な商業施設はオープンの日が最高潮となり、次第に客数が減っていくものなのですが、官民が連携したパークPFI事業は、樹木の生育などの循環型環境の構築を周辺住民や公園利用者を巻き込み実現していくため、イベント等でいかに利用者をとりこみ、賑わいを創出できるかがキモとなります。

 


うめきた広場で開催された「DOWNTOWN BMX」  2023年8月

 

しかしながら、グラングリーン大阪は園内に駐輪場がなく、10分以上離れた有料の駐輪施設を利用しなければいけません。大阪城公園や天王寺公園(てんしば)には園内に無料の駐輪場があり、ドア・ツー・ドアで公園に直接行くことできますが、うめきた公園にはそのような気軽さがないのです。

中之島公園大泉緑地ののように園内にサイクリングコースをつくれと言っているのでなく、日常生活の延長として公園を利用できるように設計する必要性があるように思います。都市交通を人体に例えるなら、鉄道は大動脈、自転車は毛細血管となります。血栓ができては健全な街となりません。

 

 

実際に大阪で日常的に利用されている自転車はママチャリで、読んで字のごとく子育て女性(ママ用自転車)です。私はこのままでは、うめきた公園は大阪の子育て世代に支持されない公園になるのではないかと危惧しています。人の多い梅田駅から1駅ほどの距離を歩くのも子連れには大変ですし、わざわざ駐輪料金を払うなら「てんしばでええわ」となるのではないでしょうか。大阪市は毎年6万台以上自転車撤去がされるほど駐輪施設が充足していません。駐輪場がないのが設計ミスなのか、これから造るのかは分かりませんが、グラングリーン大阪にはエコロジーで社会課題を解決が期待されています。

NYC「人中心のまちづくり」狂人サディック=カーンのアーバニズム

政府は2030年に温室効果ガスを2013年比で46%削減すうる目標を標榜しています。

 

 

「おぼろげながら浮かんできたんです、46という数字が。シルエットが浮かんできたんです」

 

 

小泉進次郎環境相(当時)は、これまでの削減目標であった26%を大幅に引き上げる方針を表明、菅義偉首相も国際社会に対して脱炭素社会の実現に向けて積極的に取り組む姿勢を示しました。

2016年には環境負担軽減等を基本方針とした「自転車活用推進法」が施行され、国土交通大臣を長に自転車活用推進本部を設置、環境問題という世界的な潮流に前向きに取り組んでいます。大阪府も推進法に基づき「大阪府自転車活用推進計画」を策定、都市環境の形成・サイクルスポーツの振興・サイクルツーリズム促進・自転車事故削減などを目標に関係各局が緊密に連携し計画を促進しています。

 

 

 

 

吉村洋文知事は大阪のメインストリート御堂筋の6車線のうち側道2車線を自転車専用レーンを併設した歩道と緑地帯にする転換する方針を表明、「車中心の道路」から「人中心のにぎわい空間」と変え、地域活性化につなげたいとし、現在は整備中となっています。

 

 

かつて、バス・タクシー乗り場のあった南海難波駅北側も自動車の進入が禁止され、高島屋となんばマルイに挟まれた駅前空間は腰かけや植栽が設置され、くつろげる空間となっています。御堂筋のこのような街路の整備は、アメリカ同時多発テロ直後からニューヨーク市長となったマイケル・ブルームバーグ氏の市政のプロジェクトが参考とされ、2019年にはブルームバーグ市政下における交通局長ジャネット・サディック=カーン女史を道頓堀に招き、大阪市の建設企画部の担当者と取り組みを視察しました。

 

 

「大阪市、神戸市におけるサイクリストの数は、アメリカ、カナダ、あるいはヨーロッパの大多数の都市より多いにも関わらず、自転車インフラがほぼ整備されていません。」

 

 

カーン女史は日本が基本的な自転車レーン網が備われば、自転車人口は容易に倍になるとしています。NYCは2007~13年間だけで、約400マイル(643キロメートル)の自転車レーンを設置、自転車利用者は4倍近くに伸び、事故リスクが75%減少、負傷者も半減したとし、街路に新たな息吹を吹き込んだプロジェクトで、こうした都市の変革が世界中で展開されているとしています。

 

 

 

 

世界の各都市の自転車の交通分担率を調べると、大阪市は25%、ロッテルダム(蘭)20%、ローマ20%、ケルン(独)11%、ヘルシンキ(フィンランド)7%、パリ5%、ロンドン2%と欧州の先進的な自転車都市と比べて劣るどころか、むしろ大阪を上回るのはデンマークのコペンハーゲンくらいで、諸都市とは比較しても極めて高いことが分かります。しかも、大阪は地下鉄網や公共交通機関が充実、街路も自動車が走りやすいように整備されロードプライシングのような交通制限もなく、多様な移動手段の中からわざわざ自転車を選択して使用しているのです。

 

 

 

 

2019年にシンクタンクの調査「世界自転車都市ランキング」では、第1位はコペンハーゲン、パリは8位、東京が16位で、大阪市はランク外となっています。この調査がどれほど信頼できるものなのかは知りませんが、大阪は少なくとも東京より下という考えにくいように思います。本ブログではこれまで大阪の自転車ネタを発信してきましたが、大阪市には政令市には一般的に設置されている自転車政策を推進する部署が存在せず、後退的な姿勢が目立ちます。そのため評価に値しないと考えられているのか、調査に必要なデータを収集していないのか、なんらかの瑕疵があるのではないかと推測されます。

 

 

sankei

 

 

大阪府では2008~12年までの5年間、大阪府警が自転車盗など計8万件以上の事件を少なく装うの偽装工作をしていたことが発覚、2023年には放置自転車を見つけ次第撤去する「リアルタイム撤去」開始、本年5月は同事業の組織ぐるみの不正が発覚し虚偽記載を横山英幸市長が陳謝、賠償を含めたと150万台の調査と再発防止の徹底を明言しました。

 

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【放置自転車数】

大阪市 6万1590台
神戸市 8799台
横浜市 5665台
さいたま市 3261台
広島市  1294台
浜松市 1195台
(令和2年 国土交通省 交通安全対策室資料)

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京都市はオーバーツーリズムによる交通網マヒの緩和策で、2010年から自転車総合政策を開始、自転車推進室を設置し本年には放置自転車が実質ゼロとなり、大阪市を上回っていた自転車事故もピーク年から4分の1に減少しました。交通分担率も23%と高く、成果が数字として表れています。一方で大阪は自転車利用を「マイナス40%運動」をミナミの団体と結託し標榜するなど、小泉進次郎さんがまともに見えるほどおぼろげな施策を展開しています。

 

 

 

カーン女史の活動も最初は理解されず、怒りのメッセージを書き込まれたプラカードや反対派の抗議活動で、自転車レーンの設置をめぐって市民同士が衝突し、狂人扱いされたようです。

 

「Don’t Be Conned by Sadik-khan」
(サディック=カーンに騙されるな)

 

カーン女史は、駐輪場の整備は沿道のビジネスにプラスの影響を与え、店舗を活気づけるとしています。御堂筋の再整備にはあふれかえる何万台という自転車を収容できるようにしっかりと設計されているのでしょうか。大阪市にはこの問題を解決する自転車政策を計画する部署がないのが最大の問題で、「放置自転車する人=悪人」と利用者個人のモラルでどうにかなると考えている点です。大阪人のマナーは度々問題となりますが、大阪には6万人の悪人がいて、京都はゼロというのはおかしな話です。しっかりとした計画を立て、チームを編成し、予算を計上していかなければ再整備後も放置自転車はなくならないのではないでしょうか。

 

 


アメリカの沿道デザイン案 全米都市交通担当者協会著「アーバンストリートデザインガイドブック」(2021,学芸出版社)より

維新「木を切る改革」の是非

秋も深まり、木々が色づく季節になってきました。

最近、イチョウ並木で有名な東京の神宮外苑では再開発を巡って、執行停止を求める活動家たちにより裁判沙汰となり物議を呼んでいます。外苑には周回1.2kmのサイクリングコースがあり、休日にはイチョウ並木道やコースを利用した自転車乗り方教室やレンタルサイクル、自転車レースなどが開催され、代議士の谷垣禎一氏が会長を務めていたJCA(日本サイクリング協会)の活動拠点となっていました。また、再開発で最も問題視されている超高層ビル建設予定地には、もともと青山アートスクエアという無料の美術館があり、毎年春には自転車をテーマにした展示を開催していました。

施設の更新や収益化は非常に重要なことですが、自転車産業に関わる者としてはサイクリングコースや自転車展は再開発後も残していただきたいと切望しています。

 


自転車展が定期開催された神宮外苑「青山アートスクエア」(2017年5月筆者撮影)

 

メディアは東京のことばかり伝えますが、大阪でも街路樹の伐採を巡って似たような問題が起こっています。お笑いトリオ「コント赤信号」のラサール石井氏は大阪の街路樹の伐採計画に対し、維新の「身を切る改革」をもじり「木を切る改革」であると怒りのアカ信号を灯しています。毎日新聞によると、大阪市は2022年夏から24年度にかけて街路樹や公園樹を計1万本を撤去する計画のようです。

大阪市では計画的に樹木が植えられ、街路樹の高木の数は政令市では4位の11万本、狭く公園も少ない割には樹木が密集し、植栽後50年近くが経過した街路樹の中には、根上がりによる通行障害や視認障害・視距阻害など、道路走行にも支障が出るケースもあるとのことです。

 

 

2018年9月4日の台風では、瞬間風速50m以上の猛烈な強風が大阪を襲い、街路樹が倒れ通行止めや停電が発生、サイクルショップ203がある「なにわ筋」でも倒木でバス停の屋根が損傷するなど甚大な被害があり、翌朝、出勤するとイチョウの大木が店前に横たわっていました。街路樹は憩いの景観や「都市の肺」としての緑化機能として不可欠なものですが、税金で維持管理する必然性からコストや費用対効果も併せて総合的にマネジメントする必要があります。

 

 

なにわ筋に平行して走る大阪のメインストリート「御堂筋」も4列のイチョウが植栽され維持管理され、欧陽菲菲「雨の御堂筋」に歌われ、名所となっています。市は2019年から御堂筋の道路空間の再整備に着工、6車線のうち2車線を自転車と歩行者の空間に転換する再編を進め、吉村洋文知事は37年までににぎわいと魅力ある街並みの創造のために完全歩道化を目指すとしています。

 

 

このような公共空間として街路を再定義する流れは世界的に見られ、近年の代表的なモデルとしてクルマ社会米国NYのタイムズスクエアの変革が評価されています。ブルームバーグ政権下でリーダーシップをとったジャネット・サディック=カーン交通局長は2019年に来日、東京都の小池百合子知事や京都の門川大作市長と面会、大阪でも御堂筋の取り組みを担当者と共に視察を行いました。

 

「日本に基礎的な自転車レーン網が備われば、自転車人口を容易に倍にしてみせることができるでしょう。日本の自治体のリーダーは、この重要性を認識して、優先的に取り組む必要があります。」

 

カーン女史は日本はサイクリスト(自転車利用者)の数が多く、大阪市はコペンハーゲンやアムステルダム同じくらい素晴らしい自転車都市をつくり出す資産が存在し、今ある街路だけでそれを実現できるとしています。そして、日本の街路を歩きやすく、自転車が乗りやすく、人にやさしいこれまでと違った視点で見る必要性があると言います。NYでは最初から完璧を求めず腰掛を置くなど試験的に街路を変える「パイロット・プロジェクト」を実施、するとタイムズスクエアで雪合戦が自然と始まるなど賑わいだしたといいます。

 


米国の車道に設置された駐輪場「アーバンストリートデザインガイド」全米都市交通担当者協会より

 

 

再整備で自転車人口が倍になるというのは現実性の低い数値ですが、重要なのは自転車レーンが御堂筋だけにとどまらず網の目の様にネットワーク化することだと思います。店の前のなにわ筋は再整備が行われておらず、いまだに歩道に自転車走行帯があります。街路樹のイチョウも2018年の台風で主幹が折れてしまいほとんどの木が自然な樹形が損なわれた状態となっています。なにわ筋のイチョウはヤマトシロアリの大量発生によって蝕まれ大きく活力度が低下、安全のために伐採しているようです。ヤマトシロアリは亜熱帯性の害虫ですが、近年の温暖化で北海道や青森でも被害が報告されるようになっているそうです。もはや生態系は破壊され、毎年6月にはなにわ筋はシロアリの捕食のためカラスとコウモリが集まり異様な状態になっています。

 

 

 

 

私は店を経営している都合、このような状況を2015年から指摘していましたが、毒性もなく外来種ではないと理由で対応はありませんでした。動画や画像を撮影し重ねて役所に出向きようやく殺虫剤の散布が始まりましたが、「害虫駆除の専門家ではないからわからんわ」と作業員の方は口にしていました。本年8月に波紋が広がったBIGMOTOR店舗前の植栽枯死疑惑も、このような行政な怠慢な管理体制が招いた惨事のように思います。

持続可能なまちづくりの実現のために街路の管理や再整備は不可欠ですが、前回も投稿したように大阪は財政的な問題も抱えています。英国の都市の再整備の成功事例を見ると、自治体のオープンスペースの再整備費の64%が公営くじ基金による内訳で税金負担なしでプロジェクトが進められているといいいます。

本ブログでは繰り返しになりますが、大阪府・大阪市は共産主義をこじらせ公営競技場を次々と廃止に追い込んだ黒歴史があります。カジノと異なり、公営競技は国内で100以上の自治体で半世紀以上実施されてきたギャンブルで、依存症対策も規範とできる健全性があります。大阪維新はいつまで共産主義時代の政策を踏襲し続けるのか、大都市なら在って然りの市営・府営の競輪場を早急に復活させ、安定した財源を確保すべきではないでしょうか。

「生駒山グラベル道」第1回現地調査

大阪と奈良の間に横たわる生駒山地を越えるにはいくつかの山道コースがありますが、自転車が通行可能な舗装道路は限られています。最大斜度40%以上の酷道「暗峠」(くらがりとうげ)と「サイクリストのための百名峠ガイド」(八重洲出版)にも選ばれた「十三峠」(じゅうさんとうげ)の2つの峠はとりわけ全国からヒルクライマーが集まるほど名の知れたコースとなっています。

 

 

暗峠と十三峠はおよそ6km離れていますが、2つの峠は山頂に近い標高500m付近で縦走道路で連絡しており南北に移動することができます。ただし、この縦走道は車両通行禁止で認可を受けた車両以外は自転車も含めて現在は通行はできません。両峠の入り口には入山者を拒むように車両侵入防止のゲートがあり、トレランのランナーに向けて歩行者とのトラブルとなる走行をしないように注意喚起の看板もデカデカと掲げられています。

 

 

道路の正式な名称は分かりませんが、地元の人は森林整備の自動車が通ることからこの林道のことを「管理道」や「なるかわ管理道」と呼んでいるようです。路面は全体の3分の2以上が未舗装で、幅員は3mほどあります。山中にあるものの高低差はそれほどなく、草木も刈り取られ歩きやすいようによく整備されていて、山地を南北に歩けるようになっています。

 

 

 

雨上がりの9月中旬で大阪市内の最高気温32度と汗ばむ暑さでしたが、山の中は市街地より涼しく峠の温度計は12時時点で27度と表示されていました。休憩をしながら6kmを2時間かけてハイキング、平日だったせいか人は少なく、散歩客が2人、ハイキングが3組、トレランが4人と合計男女10人ほどがいました。

 

 

 

途中で大阪の街を見下ろし休憩、地元の方にこの道について詳しく聞くことができました。

 

「昔は府がちゃんと管理していてこの道でレンタル自転車なんかもやってたよ、(生駒山地の)奈良県側の道は(自転車が)いけるけど大阪側はどこも自転車禁止や。橋下(徹知事)になってからアカンようになったわ、住友林業に委託なってからは閉鎖しとる道もあるで」

 

毎週来ているというシニアの男性は生駒山地の奈良県側と大阪側の管理のレベルに言及、府の財政悪化による改革による大阪側のサービスレベルの低下を嘆いていました。また、現在は自転車禁止ですが、かつては禁止どころか府がレジャーとしてレンタル自転車サービスをおこなっていたということを教えてくれました。

 

 

しばらく男性と話していると60歳代の女性が合流、2人は知り合い同志のようでした。ベンチに腰掛けて3人で談笑しているとランナーが走り去り、ふとゲートの看板を思い出し女性に状況を聞きました。

 

「えっ?? この山? この山、全然、人なんかおらんよ。ほんま、全然。私、晴れたら(毎日のように)来てるけど、ほんま、全っ然。つつじの時くらいちゃうかな」

 

この管理道は「府民の森」という施設を貫通、数百メートルに渡ってつつじが植えられていて区間があり、道幅もやや狭く一部が急勾配となっています。女性によると開花の時期は花見客が訪れることもありますが、その時期以外はランナーとのトラブルなど考えられないほど、誰も来ない山道だそうです。

 

 

 

サイクルショップ203がある道頓堀周辺は、海外からの観光客をたくさん押しよせ、最近ではオーバーツーリズム(観光公害)が問題化しています。生駒山地は大阪市内からも鉄道で30分程度で行くことが可能で、クマも生息していませんし遭難の危険も考えられない登りやすい山です。日本書記にも登場するほどの古い歴史があり、山中には寺社・仏閣・遊郭・遊園地などの観光資源や滝・洞穴などの自然も楽しめます。観光客の分散化のためにも、再び観光に力をいれ海外の方を呼び込むことはできないものなのでしょうか。

 

「新・観光立国論」(2015,東洋経済新報社)の著者で、日本の観光政策に詳しいデービッド・アトキンソン氏は2018年に大阪市中央公会堂で行われた講演にて大阪のこれからの観光産業の戦略を提起、私はこのシンポジウムを聴講して衝撃を受けて、それ以来、押し寄せる海外からの観光客の見方が大きく変わりました。

 

「LCCで来て、エアビーで宿泊する中国や韓国人は練習です。本当に観光立国を目指すなら、10時間以上かけて来日し7泊8日で泊まり、お金を落とす欧米人をターゲットとすべきなのです」

 

アトキンソン氏はアジア人観光客は踏み台に過ぎず、大阪が真の観光立国を目指すなら日本に長期滞在する欧米人を取り込む必要性をあると熱弁、そして、そのために必要なのは「おもてなしの心」や神社・仏閣ではなく、なんと「自転車」だというのです。どういうことなのでしょうか。アトキンソン氏の本業は日本の歴史的な文化財や工芸品の修復です。まさか、観光産業の講演でアトキンソン氏の口から自転車の活用を提言があるとは全く予想していなかった私はただただ混乱しました。

 

「欧米人でもさすがに7日連続で仏像ばかりだとうんざりします。アクティビティ、例えばマウンテンバイクとか自転車が必要なのです」

 

外国人は大阪城や京都の風情を楽しみに来日しているものだと思っていた私にはアトキンソン氏の話はほんとに目からうろこでした。たしかに、東京の高尾山には1日1万人ほどの登山者がいると聞きます。関西圏でも高野山(和歌山)・嵐山(京都)・六甲山(兵庫)・吉野山(奈良)は観光客が多く訪れますが、大阪の山に観光に来る人はあまりいません。かつては観光客を集めていた生駒山も廃寺、廃ホテル、廃病院など廃墟マニアの肝試しスポットとなり、遊郭の灯も消えかかっています。

 

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無残な姿の生駒山中の朝鮮寺廃墟群 2022年5月筆者撮影

 

2017年には自転車活用推進法が制定され、自転車を活用した観光「サイクルツーリズム」の振興が明記されています。滋賀県「ビワイチ」や和歌山県「太平洋岸自転車道」は国土交通省がナショナルサイクリングルートに制定、兵庫県淡路島もビワイチに倣い「アワイチ」として自治体がアピール活動をしています。大阪は自転車の一大生産拠点ですが、自転車観光という点ではまだまだ余地を残しています。本ブログでは生駒山地の縦走道を「生駒山グラベル道」として、将来的に自転車利用を可能にできないかを考察していきたいと思います。

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