2025年の交通事故死者数は前年に比べて116人減少し、統計開始以来最少の2547人となりました。20~40歳代の自転車事故も大幅に減少傾向にある一方で、高校生の事故発生件数が急増しています。東京五輪目前の1961年に制定されたスポーツ振興法では自転車旅行や野外活動が明示され、全国の中学校にはサイクリング車の解説図が配布され、自転車は中学二年の技術教科の教材なっていましたが、最近では自転車の使用を奨励しない中学校もあり、義務教育で交通教育が不十分であるという指摘もあります。

 


自転車を使用した昭和の交通教育「交通戦争の断面」1966年 墨東新聞社

 

振興法が制定されたころは自動車交通の急成長に伴い交通事故による死者が急増、年間死者数が1万人を上回り「交通戦争」(第1次)と言われ、深刻な社会問題となっていました。これらの対策の一環として、学校による交通安全指導を目的に建設省が主導で各地に設けられたのが「交通公園」です。交通公園には信号機、横断歩道、道路標識など疑似的な交通環境が再現され、遊びながら交通知識や交通ルールを学ぶことができるようになっています。

 

 

 

大阪府には高石市の府営1ヶ所と高槻、摂津、富田林に市営が各1ヶ所、泉大津市は2ヶ所の合計6施設運営されています。いずれも昭和40年代に設立されたもので現存しています。東京・神奈川・愛知・兵庫県・福岡は80年代まで新設されていましたが、大阪府下では1974年の摂津市「正雀交通公園」を最後に設営は途絶えています。

正雀交通公園は阪急正雀駅から徒歩10分、サイクルショップ203からは自転車で1時間ほどでしょうか。わざわざレジャーに訪れるような施設ではなく、単なる広場で地域の人が休憩や街路として使用しているような自転車が園内を走行できる児童公園です。

 

 

 

園内の設備は老朽化しており、訪問日には利用者らしき姿はみえませんでした。桜美林大の金子淳教授の研究によると、これまで交通公園は全国で209ヶ所設営され、2008年時点で47施設が廃止され「廃墟マニアの格好の餌食」と機能の喪失を憂いています。

 

「交通公園は設立当初の目的を達成していない」
「目的自体が現状にそぐわないものになってきている」

 

1970年代には1万6000人以上いた交通事故死者数も90年代には減少、2000年代に入ると1万人を下回り「戦争」は収束、金子教授の論文では学校による交通安全指導や路上遊戯の排除などの施策の効果を強調しています。交通公園は役割を果たし終え、消えゆくものなのでしょうか。

 

 


1961年12月から読売新聞で18回に渡り連載された「交通戦争」

 

沖縄県は県内にあった14ヶ所の交通公園を全廃、他の自治体でも公園としては存続しているが別の用途に転用される例も多くあり、交通教育への関心の薄さを象徴しています。

4月から導入される自転車「青切符」の違反行為は113種類あり、免許制でもないのに覚えきれないという声が上がっています。これらから徴収する違反金で、老朽化した交通公園を再整備することはできないのでしょうか。京都市の大宮交通公園は2011年に官民協働で老朽化した公園を再整備、防災公園やイベント施設を兼ねたスペースとして維持管理しています。京都は1997年の気候変動枠組条約締約国会議(COP3)にて議定書を採択、以後環境負担の少ない自転車の活用を推進しています。

 

 


▲パークPFI制度を活用し2021年にリニューアルされた「大宮交通公園」 2024年撮影

 

 

個人的に長年の疑問なのですが、最近の小学校はなぜ「自転車」ではなく「一輪車」を推奨するのでしょうか。こんな国は他にはありません。一輪車を推奨するなら、サイクリング車やBMXとかスポーツ自転車を取り入れた方が実用的なバランス感覚や運動能力がやしなえるのではないでしょうか。なんなら、この公園をBMXパークにして、賑わいの拠点としてはどうでしょうか。

BMXパークとかBMXレース場とか五輪競技に準じた指導と施設の整備は、日本のスポーツの発展にもつながると思います。BMX選手の榊原 爽(Saya Sakakibara)選手は、日本人なのにオーストラリアに移住し豪州代表としてパリ五輪に出場、見事に金メダルを獲得しました。榊原選手は国籍選択の理由にオーストラリアの練習場の多さを挙げています。

最近では自転車乗車禁止の公園も増えていると言います。正雀交通公園は京都・大宮の施設の20分の1ほどの面積しかありませんので、同じようにはいかないかもしれませんが、何とか活用できないものなのでしょうか

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