2023年のあるシンクタンクの「都道府県魅力度ランキング」調査で茨城県は全国最下位の47位、もっぱら下位に甘んじているようです。主な理由として「観光地」として魅力が他府県に比べて低く、県内の各自治体はイメージアップのため様々な取り組みをしています。

今回は霞ヶ浦の西岸の風光明媚な都市「土浦」に行ってきました。

 


霞ヶ浦の湖畔に整備された自転車道

 

第一次安倍内閣は「美しい国」を目指し観光立国推進基本法を立案、2008年に観光庁が設置され、現在では多くの旅行客を目にするようになりました。そして、広島県尾道市「しまなみ海道」や滋賀県「ビワイチ」など誘客策として自転車を観光活用したレジャー需要が高まり「サイクルツーリズム」という言葉が注目されるようになりました。

国土交通省はモデルルートとして、受け入れ態勢など環境整備の整った箇所を「ナショナルサイクリングルート」として認定する指針を取り、2019年の第1回の指定では茨城県「つくば霞ヶ浦りんりんロード」が東日本で唯一選定されました。

 


▲注目を集めている土浦の自転車観光

 

第1回の指定ではビワイチとしまなみ海道の計3ルートのみであり、りんりんロードは圧倒的に知名度が低く、先行していた他の自治体を尻目に担当者も恐縮するほどのサプライズ選定でした。当初は賛否がある選定でしたが自治体は自転車道や休憩所整備、官民連携した取り組みで現在では東日本のみならず、世界中からサイクリストが訪れ、地域が活性化してきています。

 


官民連携でナショナルサイクリングルートに指定された土浦のサイクルステーション

 

りんりんロードは旧筑波鉄道の廃線敷と霞ヶ浦を周回する湖岸道路を合わせた全長約180kmのサイクリングコースで、水郷地域や筑波山などの自然、文化遺産や博物館など様々な地域の魅力を堪能することができます。

中心となるJR土浦駅ビル内にはブルーラインが敷設され、自転車と組み立てた状態で一緒に押して歩くことができます。駅はサイクリング客を歓迎するポスターや案内が多くみられ、輪行してきた自転車を組み立てたり休憩をしたりできるように工夫が凝らされていました。

 


▲構内に自転車を持ち込めるJR土浦駅

 

宿泊したホテルでレンタル自転車を借りて霞ヶ浦を走ると湖畔には舗装路には矢羽根のペイントが施され、自転車で走行しやすいように環境整備がされていました。霞ヶ浦では「カスミガウララップダービー」というイベントが実施され、一周125kmのコースを年間20周する猛者もいるようです。

私はE-BIKE(電動アシストクロスバイク)を3時間レンタル(¥2500)、湖畔を5kmほどサイクリングをして土浦駅付近の蕎麦屋で冷えた体を温めることにしました。

 


▲自転車観光で魅力度が向上、最下位を脱出した茨城県

 

地域のこのような取り組みは経済的に波及効果があるだけでなく、サイクリングによる住民の健康増進、エコロジー等イメージ向上といったメリットが期待できます。また、重点的な道路網や施設の再整備は防災面でも重要で「自転車のまち」を標榜すると打ち出の小づちのようにお金が集まってきます。

 

「自転車に乗ったお客さん、すごく多くなりました」

 

新施設だけでなく150年以上前からある老舗の蕎麦屋もサイクリストの憩いの場として再注目され、店主の方もりんりんロードをスポーツ自転車でサイクリングを楽しみ、取り組みを歓迎しているようでした。

 

 


▲サスティナブルな取り組みに賛同する老舗の蕎麦店「吾妻庵総本店」

 

本ブログではしまなみや琵琶湖などこれまで各地の取り組みを紹介してきました。取り組みに遅れをとって、どこから初めていいか分からない自治体にひとつアドバイスをするなら、まずは「自転車政策チーム」や「自転車観光課」といった専門の小さな部署をつくり、担当者が自転車に乗ってみることをおすすめします。それだけで本当に地域が活性化されます。

次回は土浦のサイクリング拠点「PLAYatré TSUCHIURA」(プレイアトレ土浦)を紹介したいと思います。

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