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西淀川公害裁判「あおぞら財団」

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大阪はかつて東洋のマンチェスターと称され、東京をしのぐ日本最大の都市でした。終戦後も大小の工場が集中し、経済的な復興を支えてきました。一方で、大気汚染や水質汚濁など工業化に起因する公害問題が発生、ぜんそく等公害病や動植物の生態系の破壊など自然環境が大きく破壊されました。

西淀川地区では1930年代以降に工場や排ガスによる健康被害が発生、70年代には住民が団結し裁判を続け、20年かけて国・企業と和解、地域再生のために双方が協調し合いまちづくりを進めています。

 

 

4月に投稿した大野川緑陰道もこのような活動の成果で、住環境が改善され周辺は以前より人口が増加し、環境汚染や健康被害に苦しんだ時代のことも過去のこととなりつつあります。いわゆる四大公害病は社会科の授業などで習って知っている人が多いことと思いますが、地元大阪でもかつて公害があったことを後世に伝えるために西淀川には環境資料館「エコミューズ」が運営されています。

 

 

資料館は大野川緑陰道と国道2号線の交差する西淀川区千舟の「あおぞらビル」5階にあり、当時の裁判資料や環境関連の書籍が所蔵されています。ビルは裁判の和解金の一部で購入され、研究活動やイベントなど公害のないまちづくりの拠点となっています。資料館は普段は施錠されていていますが、4階の財団事務局に職員の方がいると鍵をあけてくれて見学することができます。

 

 

事業活動による公害は①大気汚染、②水質汚濁、③土壌汚染、④騒音、⑤振動、⑥地盤沈下、⑦悪臭の7つが認定されていますが、四日市は「喘息で死ぬのは高齢者で子供はほとんど死なない」と大気汚染の見解を示しており、「国」を相手取り和解した西淀川の事例は画期的な判例でした。

和解後は、持続可能な未来のために「あおぞら財団」設立、四半世紀にわたって資料館の運営だけでなくまちづくりや環境学習に取り組んでいます。汚染物質を出さない移動手段として自転車の普及にも精力的に取り組み、自転車の健全利用や交通安全啓蒙活動のみならず、幼児や障害者向けに自転車ゲームやタンデム(二人乗り)自転車の推進などユニークな取り組みも実施しているようです。

 

 

 

タンデム自転車は20台ほどあり、レンタルもおこなっています。1日1000円と料金も格安なので、大野川緑陰道や大阪市内の観光に最適です。営利企業に貸し出す際は1日3000円となりますが、インバウンド向けのサイクリングツアーなどを企画して、タンデムを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

 

 

9月には中之島公園にて「大阪サイクルピクニック」というイベントを共催し、自転車レーンの推進のため御堂筋をアピール走行を実施しているようです。御堂筋は2016年から自転車レーンを整備、道路空間の再編に取り組み将来的に完全歩道化(自転車走行可?)を目指しているようです。大阪が環境都市としてさらなる成長するため、財団の活動に今後も注目がされます。

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住民が勝ち取った奇跡のサイクリングロード、東淀川「大野川緑陰道」

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先月、自転車通行禁止となった自転車道「ホトトギスの道」について投稿しましたが、今後もさらにこの林道が有効活用されるように調査・研究を続けていきたいと思っております。

1977年4月号のサイクルスポーツ誌には、生駒西麓沿いのこの道以外に、大阪府下の20コースがリストされています。そのうちのひとつが西淀川区「大野川緑陰道」です。JR塚本駅北側付近から淀川と並行する形で河口付近まで約3.8kmが整備された自転車専用道です。まだ肌寒い3月上旬、大阪湾を目指してサイクリングしてきました。

 

 

西淀川区は大阪市の北西のはずれに位置し、24区あるなかでも最も影の薄い区と言っていほど行く機会に恵まれない地域です。鉄道駅はJR塚本駅・御幣島駅と阪神の姫島駅・出來島駅とあるものの下車したことはなく、これといった繁華街や観光地もありません。阪急の乗換駅の十三駅のある淀川区の西、神崎川と淀川に挟まれた低海抜地帯で、北側は兵庫県尼崎市となっていて、昭和期には大阪の鉄鋼・重化学工業の拠点として発展しました。

大野川緑陰道は、同地区のさらなる発展のため神崎川と淀川を結んでいた大野川を埋め立て、高速道路を建設する計画となっていましたが、大気汚染や公害が深刻化し周辺住民の強い反対により現在の緑道となりました。

 

 

 

走路は自動車や歩行者と完全に分離され、青色にペイントされ視認性も高く迷うこともありません。淀川沿いのサイクリングロードに比べて知名度こそ高くありませんが、周辺住民を中心に利用者は多く快適に走行することができます。

道沿いには公衆トイレや公園、文化施設などもあり、周辺にはコンビニやレストランやカフェも点在しています。といっても、ほとんど止まることもなく20分ほどで専用道は淀川の河口に合流します。あっという間です。

 

 

淀川沿いに出ると突然、強い風に吹きっ曝され、木々に覆われた緑陰道の快適性が改めて実感できました。淀川河口は、1月に迷いクジラの淀ちゃんが発見され、全国的なニュースとなり、にわかに注目を集めました。大阪でホエールウォッチングができるなんて滅多にないので見に行こうと思っていたのですが、淀ちゃんは衰弱し数日後にあっけなく死んでしまいました。

淀川北岸はそのまま自転車で走行できるように整備され、神崎川との三角地帯は海岸緑地「矢倉公園」となっていて大阪湾を望むことができます。

 

 

 

 

矢倉公園は2000年に整備された大阪市唯一の自然海岸公園で近隣住民の憩いの場となっているようです。私は初めて来ましたが、潮だまりや野鳥観察所などが整備され、開放的で自然を感じられます。大阪市内にもこんな場所があったんですね。

 

 

 

自転車を降りて園内を歩き大阪湾側の干潟に目を落とすと、ペットボトルなどのプラスチック製品のゴミが無数に散らばっていることに気づきました。ゴミの散らばり方から来園者のゴミではなく、湾内の漂流ゴミが潮の満ち引きなどで磯に打ち上がったような感じです。とても一人では拾いきれる量ではないため、見なかったことにして帰りましたが、考えさせられるものがありました。

区は地域ぐるみで清掃活動やイベントを熱心におこなっているようですが、毎年のように投棄される海洋ゴミは産業構造や文明そのものを変革しなければ減らず、深刻化しています。

 

 

西淀川区は70年代に公害汚染で人口が減少、住民が立ち上がり環境改善に必死に取り組みました。緑道の完成後は住みやすさが飛躍的に向上、汚染物質が環境基準以下になるようにコンビナートや工場と協調しながら、環境づくりに取り組んでいます。このような結果、80年代以降は人口が増加傾向に転じました。

大気汚染や公害のイメージが強い地区でしたが、実際に行ってみるととても住みやすそうな場所でした。緑陰道は西淀川区内で完結していますが、自転車道はネットワーク化することに価値があります。欧州では国を跨いだ自転車道路網が整備されていると聞きます。自転車が環境社会のアイコンとなり、政府や自治体・住民が目標をさだめて自転車の振興を目指しているようです。

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