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大仙公園にあった自転車博物館「サイクルセンター」が、堺東に移転し「シマノ自転車博物館」にリニューアルされたので行ってきました。

shimano muse

 

大仙公園の仁徳天皇陵の南西側にあったシマノが運営している自転車の博物館は、本ブログでも毎年おこなわれる特別企画展の様子を投稿していましたが、シマノが創業100周年を迎えた今春に3.5倍に増床しリニューアルしました。

以前の施設は堺市からの賃貸物件で、百舌鳥(もず)古墳群がユネスコにより世界遺産登録となったことを受けて、建物を関連施設へ転用する話が持ち上がり、シマノは移転先を探していました。

新施設は以前の場所から北に1km、堺市役所などがある市の中心駅の南海高野線「堺東」駅から徒歩5分の好立地で、新しく建てられた自社施設となっています。大阪市内からだと「なんば」から乗り換えなしで20分ほどで行けるようになりました。

 

bicyclemuse

 

同施設には19世紀初頭からの貴重なクラシック自転車などが展示されています。国内には「関西サイクルスポーツセンター」や「自転車文化センター」など自転車関連施設はありますが、自転車の博物館というのは国内で唯一となり、コレクションの質も他所とはレベル違いとなっています。

 

draisine

 

入館料が一般200円から500円に値上げとなったのが少し残念ですが、自転車に興味のない小学生から自転車マニアまで誰でも楽しめるようディスプレイ方法や映像で工夫されていて、充分に満足できると思います。

ビルは4階建構造で1、2、4階が鑑賞エリアとなっています。

1階部分は無料エリアと有料エリアに分かれていて、無料展示エリアでもコレクションの一部を見ることができます。それだけでなく、駅近くなので夏の暑い日や雨の日などは待ち合わせ場所となり、トイレも利用できます。写真撮影もOKなので、チャップリンが乗ってそうなかわいい自転車とSNS映えする一枚を友達と共有するも良し、写真を額装して部屋に飾ってもおもしろいかもしれません。

 

old cycle

 

2階部分は自転車発祥の歴史を貴重な実車を見ながら映像を鑑賞できる大空間となっています。

これらの充実したコレクションは創業者の島野庄三郎の次男である三代目社長の敬三が、オランダの自転車メーカーのバタバス社の社長から1982年に購入したものが大半となっていて、間違いなく世界有数の展示品となっています。

大仙公園の時の施設は1992年開業で結構ギチギチに詰め込んであった印象があるのですが、新施設は1台1台の展示間隔が広めにとってあって、ソーシャルディスタンスが確保でき、希少な自転車をゆっくり見ることができます。

 

cycle muse

 

4階は回廊となっていて、特別企画展などを催す展示室や豊かなサイクルライフのヒントとなるような自転車紹介、自転車関連書籍などを閲覧できるライブラリーなどがあり、一日中居ても飽きない楽しい場所となっています。展示されている名車はそれぞれ特徴があり一度では紹介しきれませんので、本ブログでまた一台ずつ小出しで紹介していきたいと思います。

 

libruary cycle

 

シマノは堺の町工場として誕生し、世界最大の自転車企業に成長しました。東証プライム上場企業で昨年9月には株価も上場来最高値を記録、在阪企業としてキーエンス、伊藤忠商事、ダイキン、武田薬品工、パナソニックに次ぐ規模の大型企業であり、雇用やものつくりだけでなく様々な地域貢献など社会的活動に取り組んでいます。

 

shimano head

 

シマノは世界最大の自転車企業でありながら、自転車そのものはつくらず部品の製造にとどまっています。自転車の製造は分業制でフレームはフレームメーカー、タイヤはタイヤメーカーが製造し、シマノは主に車輪やギアなど駆動部を担っていて高いシェアを保持し、技術力で世界を支配しています。

自転車本体を製造すれば企業としてもっと売上を伸ばせるように思えますが、これはマーケティングというより経営理念の問題になります。例えば、考え方として「人類史上最大の発明はなにか」という問いに、「自転車」と回答する人と「車輪」と回答する人、どちらが多いのか。経営というのはこのような難題の連続で、100年続いているというのは、それだけでも非常に立派な回答を出して、シマノが自転車部品を鋳造するのは造幣局が硬貨を鋳造するようなもので、星の数ほどある自転車は今日も世界のどこかで壊れ、シマノの部品を必要としているということなのです。