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シマノ自転車博物館「ロードバイクの進化」展

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昨年リニューアルしたシマノ自転車博物館に行ってきました。

 

 

もともと、大仙公園の仁徳天皇陵の南西側に博物館ですが、シマノが創業100周年を迎えた昨春に3.5倍に増床しリニューアルしました。新施設は以前の場所から北に1km、堺市役所などがある市の中心駅の南海高野線「堺東」駅から徒歩5分の好立地で、新しく建てられた自社施設となっています。大阪市内からだと南海「なんば」から乗り換えなしで20分ほどで行けるようになり利便性が向上、特別展「ロードバイクの進化展」を見てきました。

 

 

入館料は一般500円、自転車に興味のない小学生から自転車マニアまで誰でも楽しめるようディスプレイ方法や映像で工夫されていて、充分に満足できると思います。ビルは4階建構造で1、2、4階が鑑賞エリアとなっていて、特別展は4階北側の特別展示室で開催されていました。

 

 

展示のロードバイクはスチール・アルミ・カーボン製の車両がそれぞれ1台づつあり、東京オリンピックが開催された60年代から現在までを「近代化の時代」「挑戦の時代」「科学の時代」の3つの時代に分け、当時の機材と同時代に使用されていたウエアやシューズと併せた展示となっています。

 

 

前々回のブログ投稿で戦後復興期に開催されたロードレース「ツーリスト・トロフィ選手権」に向けて開発されたアルミ合金自転車の三菱重工「三菱十字号」を紹介しましたが、同モデルは現在のロードバイクとは大きく異なることは、誰の目に明らかだと思います。その後、自転車競技法は施行され、競輪が国内で実施されるとスポーツ自転車熱が沸騰、国内メーカーは1964年東京五輪が開催される頃には、欧州の技術水準に匹敵するロード車を内製できるまでになりました。

 


三菱重工「三菱十字号」(常設)

 

欧州の中でも、イタリアとフランスは選手経験を持つフレームビルダーが次々と現れ、経験を生かした高性能な競走専用自転車生産、展示の1972年製「CINELLI」は、フレームのスチールに様々な混ぜものをすることで強度や剛性を高め、軽量化されたロードレーサーです。円筒型の細身の鋼管はダイヤモンド形状で、高速走行するための機能美が追及されています。

 


近代化の象徴イタリア製のスチールロード「CINELLI」

 

80年代に入るとフレームはスチールからアルミやカーボンといった新素材へと進化し、欧州の伝統的なファクトリーに加えて、北米やアジアのメーカーも欧州レースに参戦します。米「cannondale」は伝統にとらわれない太径アルミと独自のアルミ溶接で新境地を開拓、90年には変速やペダルにも今までにない画期的な機構が登場し変革が起こりました。

 


▲ 挑戦の時代のアルミロード「cannondale」

 

さらに、これまで試行錯誤を繰り返していたカーボン(炭素繊維強化プラスチック)フレームのモノコック生産が確立、2000年以降は高レベルな強度と剛性に加えて、科学的実験に基づいた最先端の空力や設計が研究され、変速システムは電子制御へ進化しました。これらの進化はレース用途だけでなく、サイクリングを楽しむ層にも浸透し、「GIANT」の新型の女性向けカーボンロードバイク「LIV」が展示されていました。

 


▲ 科学の時代のカーボン製ロードGIANT「LIV」

 

これらの車両以外にも、特別展ではスチール・アルミ・カーボンの重量差が比較できるフレーム展示や昔のロードレースの資料も展示され、併せて進化の変遷を体感できるようになっていました。展示は2024年3月31日(日)にまでとなっています。ロードバイク好きならずとも是非ご体感ください。

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皇統と稲作で読み解く「前方後円墳」の謎 ~ 古墳巡りサイクリング ~

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季節も良くなってきたので、サイクリングで堺市に古墳巡りに行ってきました。

大阪市の中心部から南に20km、大和川の南岸には今から1500年以上前に造られたとされる大小多くの古墳が現存しています。大仙古墳など巨大な前方後円墳や陪塚は、2019年には「百舌鳥・古市古墳群」として大阪府下で初めての世界文化遺産に認定され、再注目されています。

 

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世界文化遺産に登録された大仙古墳

 

古墳時代はまだ文字がなく、中国が内乱期で当時の日本を記した文献もないため「空白の四世紀」とされ、なぜこのような巨大な古墳が造営されたのか未だに良くわかっていません。私が初めて百舌鳥・古市古墳群について知り、この時代に興味を持ったのは「キン肉マン」という格闘プロレス漫画で、自身の左腕を鍵にして前方後円墳に突き刺し、悪役レスラーを弱体化させるという、伏線なしの衝撃のクライマックスシーンのくだりです。作者「ゆでたまご」の嶋田隆司さんは大阪出身、荒唐無稽でスリリングな世界観は「ゆで理論」と言われ連載終了後もファンから礼賛されています。

 

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▲ 富士山麓に突如出現した前方後円墳に左腕を刺すキン肉マン 23巻「わが身を捨てて鍵となれ」より

 

「ゆで理論」では前方後円墳は地球を活動させたり停止させたりするための鍵穴とされていますが、鍵のような形状になっている墳丘は「穴」ではなく実際は土が盛られ凸型で、しかも巨大です。そもそも、この時代にはまだ日本に鍵は伝来していないため、歴史学や考古学的にも仰天のフィニッシュホールドです。「ゆで理論」以外にも、この時代においては「騎馬民族征服王朝説」や「日本ユダヤ同祖論」などユニークな考察がされていますが、文化遺産登録後も本格的な発掘調査は許可されず、いまだに多くの謎を残しています。

それにしても、これほど大きな古墳を一体、誰が、何のために、どうやってつくったのでしょうか。現地に行けばなにか謎を紐解くヒントがあるかもしれません。

 

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百舌鳥と古市古墳群の間に位置する「大泉緑地」 広大で誰でも利用できるBMXコース

 

古墳群は百舌鳥古墳群と古市古墳群の2つに分かれていいます。両古墳群は5kmほど離れていて、その間には広大な敷地の府営緑地「大泉緑地」があります。緑地内には無料で誰でも利用できるBMXのダートコースがあり、南側には田園風景が広がっています。

前方後円墳は上空から見ると確かに鍵穴のような形状にみえますが、真横から見ると全貌が分からず陵墓は木が生い茂る小高い丘で、外濠はただの水路のように見えます。世界遺産になってまだ時が浅いためか、大仙古墳の周囲ですらまだ観光向けの再開発が本格化しておらず、昭和時代の老朽化したラブホテルや文化住宅が残っていています。

 

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水路の様に見える「大仙古墳」の外濠  

 

大仙古墳はエジプトのピラミッドより巨大で、推計によるとを当時の土木技術で築造すると工期は15年以上、作業員数は延べ680万人だそうです。盛り土の総容量は140万㎥以上、これは10tダンプ25万台分で周濠の切削残土だけでは半分ほどにしかならず、周辺から墳墓のために膨大な土が集められたということになります。これほど多くの労働力を賄うためには水や食料が必要となり、狩猟採集だけでなく稲作などの農耕が行われていました。

稲作農業には灌漑施設が必須となるため、前方後円墳の周濠は農業用水の確保のために掘削されたとも考えることもできます。つまり一帯を共同事業で農地の開墾をした副産物が古墳で、主目的は水田稲作だったのではないでしょうか。大泉緑地の南側の水田地帯には世界遺産指定の古墳はありませんが、その代わりため池が点在しています。大仙古墳周辺も昭和期までは水田地帯で、現在も奈良県の一部では周濠の水を農業用水に利用しているようです。

 

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大泉緑地の南側に残されている水田地帯

 

自宅にもどり図書館で調べてみると、稲作のために古墳を築造したという説は全く無い訳ではありませんが、通説では周濠の水を灌漑利用しだしたのは中世以降という見解が有力のようです。農業土木の技術者である田久保晃氏は考古学や歴史学の常識とはまた違ったアプローチで独自考察、著書「水田と前方後円墳」(2018, 農文教プロダクション)にて、前方後円墳は、墓であるとともに、その周濠が溜池として機能していたとしています。ピラミッドは農閑期の公共工事としての役割を担っていたそうですが、前方後円墳もきっと同様の役割を果たしていたのでしょう。

 

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水田に囲まれている昭和期の大仙古墳 山根徳太郎「難波王朝」(学生社,1969)より

 

巨大な前方後円墳も大化の改新以後は薄葬令が出され姿を消していきます。大化の改新では首都が難波宮に遷都されます。難波宮は8月にも本ブログで取り上げましたが台地の上にあり、当時は半島で一帯は水田利用された地歴がありません。政治の中枢と農地が離れた場所になったため天皇が直接的に農地開発する農本的思想から律令体制に移行、農地の中心である古墳に価値を求めなくなり、簡素化していったのではないでしょうか。

大和民族は端的に「皇統」と「米」の民族といえます。大化の改新以降は大和川水系を離れ、長岡京や平安京など琵琶湖~淀川水系に首都を設置することが多くなりますが、現在でも宮中催事で新嘗祭などの収穫を祝う儀礼が執り行われています。

謎が多い古墳時代ですが、世界遺産の登録は今後の調査・研究を活発にするきっかけとなり、新しい発見があるかもしれません。堺は国内輪業の中心で仕事柄行く機会が多いので、また新発見があれば行ってみたいと思います。

 

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世界有数の所蔵「シマノ自転車博物館」堺東駅前に爆誕

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大仙公園にあった自転車博物館「サイクルセンター」が、堺東に移転し「シマノ自転車博物館」にリニューアルされたので行ってきました。

shimano muse

 

大仙公園の仁徳天皇陵の南西側にあったシマノが運営している自転車の博物館は、本ブログでも毎年おこなわれる特別企画展の様子を投稿していましたが、シマノが創業100周年を迎えた今春に3.5倍に増床しリニューアルしました。

以前の施設は堺市からの賃貸物件で、百舌鳥(もず)古墳群がユネスコにより世界遺産登録となったことを受けて、建物を関連施設へ転用する話が持ち上がり、シマノは移転先を探していました。

新施設は以前の場所から北に1km、堺市役所などがある市の中心駅の南海高野線「堺東」駅から徒歩5分の好立地で、新しく建てられた自社施設となっています。大阪市内からだと「なんば」から乗り換えなしで20分ほどで行けるようになりました。

 

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同施設には19世紀初頭からの貴重なクラシック自転車などが展示されています。国内には「関西サイクルスポーツセンター」や「自転車文化センター」など自転車関連施設はありますが、自転車の博物館というのは国内で唯一となり、コレクションの質も他所とはレベル違いとなっています。

 

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入館料が一般200円から500円に値上げとなったのが少し残念ですが、自転車に興味のない小学生から自転車マニアまで誰でも楽しめるようディスプレイ方法や映像で工夫されていて、充分に満足できると思います。

ビルは4階建構造で1、2、4階が鑑賞エリアとなっています。

1階部分は無料エリアと有料エリアに分かれていて、無料展示エリアでもコレクションの一部を見ることができます。それだけでなく、駅近くなので夏の暑い日や雨の日などは待ち合わせ場所となり、トイレも利用できます。写真撮影もOKなので、チャップリンが乗ってそうなかわいい自転車とSNS映えする一枚を友達と共有するも良し、写真を額装して部屋に飾ってもおもしろいかもしれません。

 

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2階部分は自転車発祥の歴史を貴重な実車を見ながら映像を鑑賞できる大空間となっています。

これらの充実したコレクションは創業者の島野庄三郎の次男である三代目社長の敬三が、オランダの自転車メーカーのバタバス社の社長から1982年に購入したものが大半となっていて、間違いなく世界有数の展示品となっています。

大仙公園の時の施設は1992年開業で結構ギチギチに詰め込んであった印象があるのですが、新施設は1台1台の展示間隔が広めにとってあって、ソーシャルディスタンスが確保でき、希少な自転車をゆっくり見ることができます。

 

cycle muse

 

4階は回廊となっていて、特別企画展などを催す展示室や豊かなサイクルライフのヒントとなるような自転車紹介、自転車関連書籍などを閲覧できるライブラリーなどがあり、一日中居ても飽きない楽しい場所となっています。展示されている名車はそれぞれ特徴があり一度では紹介しきれませんので、本ブログでまた一台ずつ小出しで紹介していきたいと思います。

 

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シマノは堺の町工場として誕生し、世界最大の自転車企業に成長しました。東証プライム上場企業で昨年9月には株価も上場来最高値を記録、在阪企業としてキーエンス、伊藤忠商事、ダイキン、武田薬品工、パナソニックに次ぐ規模の大型企業であり、雇用やものつくりだけでなく様々な地域貢献など社会的活動に取り組んでいます。

 

shimano head

 

シマノは世界最大の自転車企業でありながら、自転車そのものはつくらず部品の製造にとどまっています。自転車の製造は分業制でフレームはフレームメーカー、タイヤはタイヤメーカーが製造し、シマノは主に車輪やギアなど駆動部を担っていて高いシェアを保持し、技術力で世界を支配しています。

自転車本体を製造すれば企業としてもっと売上を伸ばせるように思えますが、これはマーケティングというより経営理念の問題になります。例えば、考え方として「人類史上最大の発明はなにか」という問いに、「自転車」と回答する人と「車輪」と回答する人、どちらが多いのか。経営というのはこのような難題の連続で、100年続いているというのは、それだけでも非常に立派な回答を出して、シマノが自転車部品を鋳造するのは造幣局が硬貨を鋳造するようなもので、星の数ほどある自転車は今日も世界のどこかで壊れ、シマノの部品を必要としているということなのです。

 

 

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