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TAG: サイクルツーリズム

競輪場に泊まれる玉野競輪「HOTEL 10」

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(前回投稿の続き)

玉野競輪場「HOTEL 10」は世界初の競輪場に泊まれるホテルです。

 

 

昨年開業したこのホテルはスタンドの一部を建て替えた新しい施設で、客室から瀬戸内海が望め競走の開催日はベランダから熱い戦いを観ることができます。ホテルの運営は食堂「FORQ」と同様に株式会社MIXI傘下「チャリロト」が受託、解体前の廃材をおしゃれに再活用した内装になっています。

 

 

8階建ての施設の客室は100室ほどあり、公式サイトから予約をして宿泊しました。ハイシーズンの夏休み中でしたが朝食付で8000円台と地域最安値、直島で宿泊するよりかなり安く泊まれるのではないでしょうか。競輪場東側には海岸公園がありますが、個人的には対岸の直島のビーチ(夏季無料シャワーあり)の方がおすすめです。どちらにしても、ほとんど海水浴客はいない、プライベートビーチ状態です。

 

 

客室は第1コーナーを眼下に見ろす位置となり、おそらく声援も選手に届いていると思います。宿泊部屋はビジネスホテルのような感じでしたが開放感がありベランダで座って景色を眺めボーっっとしているだけで気持ちよくなります。デラックス・スイート部屋も格安料金なので、空室があるならそちらがおススメです。

 

 

部屋にはテレビモニターが設置され、競輪の中継も見ることができます。館内着はポロシャツで、あとは普通のビジネスホテルと同じような感じでした。注意点としては、競輪開催日は大浴場が使用できないので、部屋のシャワーのみとなります。

 

 

ゲームコーナーやライブラリーといった付属施設はありませんが、廊下の壁面がギャラリーとなっていてアート作品が飾られています。ロビー横には売店があり、館内着のポロシャツやセンスのよい雑貨類が購入することができます。

 

 

チェックインの時に領収書を出せば、宇野駅からのタクシー代を1000円まで返金してもらえるようです。また、宇野駅 – 競輪場 – HOTEL10を走るジャンボタクシーも利用ができます。

 

 

近年、競輪はMIXIだけでなくソフトバンク、楽天、サーバーエージェントといったIT企業が担い手となっています。公営競技はインターネット投票が解禁となり、少なくとも全体で600万人が参加しているそうです。このような状況で売上げはV字回復していますが、競輪場の入場者数は減少し続けているようです。玉野競輪場の一連の取り組みは成功事例として、各主催自治体のロールモデルとなるように思います。

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リゾート&アート「玉野競輪場」の温故知新

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岡山県玉野市の「玉野競輪場」に行ってきました。

 

 

玉野競輪場は1950年に開設された岡山県下唯一の競輪場で、玉野市が競走を主催しています。玉野市は人口およそ5万人、1988年に瀬戸大橋が開通するまでは連絡船が往来し造船業も盛んな港湾都市でしたが、現在では市の歳入のおよそ3割を競輪事業会計に依存しています。対岸の四国側には高松市営「高松競輪場」があり、宇野港を経由しアートで世界的な脚光を浴びる香川県の直島に行くことができ、観光収入が新たな収益源となっている港町です。

 

 

競輪場は宇野港から徒歩15分ほど離れた海沿いに位置します。JR宇野駅から送迎バスも出ているようですが、この日は最高気温35度でバスも待てないほどの灼熱地獄だったのでタクシーで直行、10分もしないうちに施設が見え、外周をぐるっと廻って料金1000円でした。

 

 

バンクは一周400mの屋外型で、ちょうど台風が接近していて、強い海風が流れ込んでいました。入場料は無料、ナイター設備がありガールズケイリンも開催されています。2022年にスタンドが改修され、空調の効いた海を望む最高のロケーションからレースを観覧でき、本場開催日のこの日はファンでほとんど埋まっていました。

 

 

 

「あか、がんばれー」

 

競輪場のマスコットは選手をイメージした「ガッツ玉ちゃん」。家族連れもファンもいて、子供の声援が場内に響きます。トイレも清潔で、喫煙者スペースも設けられています。野球やサッカーなどのスポーツ競技場なら当たり前の光景でも、迷惑施設と疎まれ続けてきた競輪場はエレベーターがあるだけでもマシな方で、屋根や壁が穴だらけで戦後期から放置され、取り残されている施設の方が多かったりする現状があります。

 

 

施設内には競輪の歩みやレースのポイントを分かりやすくパネル化したキャラリーを併設、主催の玉野市は競輪の観客による集客だけででなく、競輪事業による潤沢な収入で港湾整備や芸術祭、観光振興等に取り組み高い波及効果をみせています。

 

 

2022年のリニューアルは単なる改修工事ではなく、公営競技場のあり方を大きく転換するような急進的なテコ入れで、建て替えにはモンストやマイミクで一世風靡したIT企業「株式会社MIXI」傘下の「株式会社チャリロト」が参加、施設の包括的な運営を行っています。

 

 

本ブログではこれまで、岸和田奈良京都向日町小松島といった昭和臭する施設の現状を紹介してきました。玉野競輪場は行政から見放された老朽化公営競技施設の運営に新たな希望を与える成功事例といえます。しかし、玉野競輪場はこれだけではありません。同施設の本当のスゴさを2回にわたって詳説していきたいと思います。

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堀江には公衆トイレがありません

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先月の東京・浅草で開催された合同展示会の際に、代々木上原の近くに宿泊したのですが、周辺のQOLが非常に高かったのでそれについて少し書きたいと思います。代々木上原は代々木公園の西側で、原宿駅から徒歩圏で、大阪で言うならちょうどサイクルショップ203のある南堀江に近い雰囲気を持っている暮らしやすいそうな地域です。

 

yoyogi park

 

代々木公園は明治神宮の西側に隣接する広大な公園で、公園内にはレンタル自転車があり敷設されたサイクリングコースでサイクリングを楽しむことができます。サイクリングコースは歩行者と分離されていて「歩行禁止」となっています。あたり前と言えばあたり前なのですが、大阪には歩行者が完全に「歩行禁止」のサイクリングコースはないのではないでしょうか。コースはもちろん自分の自転車を持ち込んで走行することもできます。

公園の周辺には好感度のショップや飲食店が点在し、この日は佐世保バーガー風のハンバーガー店で食事をとりました。こういうお店は堀江にもありますが、印象としては大阪に比べお客さんが多いように思います。

 

humberger

 

公園の端の道路を挟んだ西側の「はるのおがわプレーパーク」には、新しくなった千葉競輪場(千葉JPFドーム)を設計した建築家の坂茂さんがデザインした公衆トイレがあります。トイレはガラス張りで通常はスケルトンとなっていて、中から施錠すると曇る斬新な仕掛けとなっています。公衆トイレというと不衛生で暗いイメージですが、このトイレはできたばかりということもありきれいでメンテナンスも行き届いて、観光スポットのようにトイレの前で撮影をしているグループもいました。

 

tokyo toilet

 

私の行った時は冬の寒さでガラス壁のギミックが仕掛け不良になり、常時不透明な状態でしたがトイレとしての機能には問題ありませんでした。このような斬新な仕掛けにSNSなどでは戸惑いや批判的な意見が投稿されていましたが、そもそも公衆トイレがひとつも存在しない大阪の堀江と比べると管理の行き届いたトイレがあるだけ贅沢な悩みで、むしろ不思議な現象が広く知れ渡ったことでより実用的な技術開発の後押しとなったのではないでしょうか。周辺住民にとっても身近にこのような施設があることは、利便性だけでなく子供たちへの科学技術や建築への関心を促す装置となっているようにも思えます。

 

shigeru ban

 

渋谷区にはこのトイレ以外にも安藤忠雄や隈研吾、佐藤可士和、NIGOといった世界的な建築家やクリエイターがデザインした個性的な公共トイレが「THE TOKYO TOILET」というプロジェクトとして17ヶ所に設置され、メンテナンスやマネジメントされています。大阪人にとっては舞洲の1000億円以上かけたフンデルト・ヴァッサーのゴミ焼却場の悪夢がありデザイナー建築に拒否反応が出てしまいますが、同プロジェクトは税金ではなく、ボートレースの売上金による社会福祉団体「日本財団」によって手掛けられています。

清潔なトイレというものは誰しもが渇望するもので、近年ではSDGs(持続可能な開発目標)という人類の17の課題のひとつとなっています。大阪万博を2025年に控えて堀江にも公衆トイレを設置してもらいたいのですが、本ブログでも繰り返してますが大阪府・大阪市はアンチ公営競技を率先した黒歴史時代があり、今も尚、当時の共産党系の首長の意向を踏襲していることから公営競技からの支援を要求できる立場にないように思います。

 

design toilet

 

1月にはサイクルショップ203の最寄り駅の大阪メトロ「西大橋」(大阪市西区北堀江1丁目)の駅トイレにて腹部を刺される事件が発生、人に目に付きにくい閉鎖的な多目的トイレのつくりに不安の声が上がっていました。大阪市内では大きな公園にしか公衆トイレはなく、堀江公園のような規模の小さい公園にはありません。はるのおがわプレイパークでは、フットサルを楽しむ子供やペタンクをしている老人がいましたが残念ながらトイレがない堀江では近隣住民を対象とした小規模なイベントしか開催できません。

同じ大阪府でも私の故郷の箕面市はボートレースを主催していて、どの公園にもだいたい公衆トイレくらいはあったので、大阪市内に転居した当時はたいへん戸惑いました。本年末にはボートレースの収益金を活用し、北大阪急行が延伸され大阪メトロ御堂筋線の終着駅が千里中央駅から「箕面萱野駅」となる予定で、箕面市は新しい商業施設や図書館などと合わせた都市計画を推進、大阪大学の新キャンパスの誘致にも成功しました。大阪市・大阪府は緊縮体制で赤字解消に取り組んでいますが、個人的にはなぜかつてのように公営競技を実施しないのか、本当に不思議で不思議でなりません。

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シマノ自転車博物館 特別展「自転車の旅 様々なかたち」

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堺東にあるシマノ自転車博物館で開催中の特別展「自転車の旅 様々なかたち」とみてきました。
特別展は「心と心の共鳴」をテーマに4階の特別展示室で2023年3月19日まで催される予定となっています。

 

jitensha tabi

展示は3つの旅が取り上げられていて、実際に旅で使用された自転車だけでなくパネルやVTRなどを使用し、旅先でのふれあいや思い出が再現されています。

①宇都宮夫妻
②坂本達ファミリー
③西川昌徳と参加者

 

cannondale

 

 

★★

 

 

 世界で一番長いハネムーン 宇都宮一成・トモ子

宇都宮夫妻は1997年から10年半、五大陸88ヶ国10万キロを2人乗りのタンデム自転車で走破、その旅行記「世界でいちばん長いハネムーン」(風濤社,2010)は495ページあり、一日一日の旅の様子が残されています。エピソードから鉄砲玉のようなご主人を勝手に想像していましたが、展示車からは意外と用意周到で本のイメージとは少し違ってました。

自転車は「zephyr」(ゼファー)製のMTBタイプのクロモリ製のスペシャルメイド、同著によると自転車は2台あるようで「二代目はアルミ製フレーム」とあることから、1台目の自転車の方なのでしょうか。zephyrは以前にも紹介した「東京セブンメンバーズ」一員の自転車店「東京サイクリングセンター」のオリジナルで、おそらく鳥山新一監修、フレームは東叡社によって製作されたものだと思われます。

tokyo cycling center
宇都宮夫妻の東京サイクルリングセンター「zephyr」のタンデム自転車

 

 

 

② 家族で自転車世界冒険 坂本ファミリー

topeak babyseat
▲ TOPEAK「Babyseat」を装着した坂本ファミリーのマウンテンバイク

 

坂本達さんは子供衣料ブランド「ミキハウス」の社員で、特別有給休暇を取得し1993年から4年3ヶ月かけ5万5千キロの自転車で世界一周を走破、2015年10月からは佳香夫人と3人の子供共に自転車旅を続けています。著書「やった。」は私が初めて読んだ自転車紀行文で個人的に思い入れがあります。続編の「ほった。」とそれぞれ写真が豊富で読みやすく、高校や中学の教科書に採択されているようです。

ミキハウスは八尾市の企業で坂本ファミリー以外にも多くの支援活動を行っていて、博物館では自転車絵画コンテスト「ミキハウス賞」の展示も同時にされていました。

mikihouse
▲自転車絵画コンテストに協賛する子供服衣料メーカー「ミキハウス」

 

③子供たちと自転車旅  西川昌徳と参加者

coffee ride
▲西川昌徳さんは2019年からは「daily life bicycle cafe」で日本縦断

 

西川さんは1983年兵庫県姫路市生まれ、12年間で36ヶ国9万キロをマウンテンバイクで走り学校公演などで子供たちに旅人の物語を伝える活動をされているそうです。私はこの特別展で初めて西川さんのことを知りましたが、2019年からはコーヒーを通じて出会いを生み出す「daily life bicycle cafe」にて日本を縦断、そして反日政治や反日デモを性懲りもなく展開する韓国に見かねて、あえて服の袖に日の丸を付けて無料でコーヒーを振る舞う活動「Free Coffee」をしているようです。

 

 

★★

博物館は本年3月に大仙公園から堺東駅にリニューアル、特別展以外にアドベンチャーバイクが何台か展示されていて楽しめるようになっています。

cycle muse

シマノ自転車博物館
[施設] 大阪府堺市堺区南向陽町2-2-1
[開館時間] 午前10:00~午後4:30
[休館日] 月曜日、祝日の翌日(土、日の場合は開館)

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冒険家 池本元光と「タルーゼ号」

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私の目の前に1冊の古い本があります。

数年前に入手したこの書籍は1982年に出版された「アフリカよ、キリマンジャロよ」というタイトルの冒険記で、著者は大阪出身の池本元光というアドベンチャーサイクリスト、79年にアフリカを走破した記録が綴られた1冊です。

私はこの冒険家が好きで、同書籍と前作「世界ペダル紀行㊤㊦」(1974)を併せて図書館で借り、以前に読んだことがあったので、購入後もしばらく読まずに書棚に置いていました。そして、忘れたころに何気なくページをめくってみて大変驚きました。

 

africa cycle

 

40年前の本の初頁には1枚に写真とともに著者のサインが書かれていたのです。

親愛なる
髙橋 勇さまへ

どうやらこの本は著者が自転車研究家の髙橋勇氏に贈った本だったようなのです。

– – –

(前回の続き)

大阪・河内長野市の自転車遊園地「関西サイクルスポーツセンター」の正面入り口を入って左手にターミナルハウスという2階建ての建物があります。1階部には総合案内所や売店がありスタッフもいるのですが、2階に上がると古い自転車や資料の展示コーナーがあり、賑やかな遊園地の中の静かな空間が広がっています。

これらの貴重な展示品は、関西の自転車企業から寄贈されたもので、なかでも高度経済成長期に大阪の自転車業界のリーダー役として存在感を示した城東輪業社(大阪市)の寺島常雄氏のコレクションが目を引きます。

 

terashima bunko

当時は本格的な自転車博物館が国内にはなく、ニューサイクイリング誌(1973年1月号)では、前田工業の資料館と寺島・髙橋の両氏のコレクションの存在を挙げています。前田工業は変速機メーカー「サンツアー」として一時代を築きましたが1990年代に廃業、髙橋氏も他界し収集品が散逸状態にあります。

私は数年前から髙橋氏の収集していた書籍類の再収集のため、古書店や骨董市巡りなどをしていた経緯があり、冒頭のサイン本「アフリカよ、キリマンジャロよ」を偶然にも入手したのです。

著者の池本氏は1947年生まれで、髙橋氏のサポートを受け68年から4年4か月をかけ5大陸を走破、帰国後も同氏の紹介で関西サイクルスポーツセンターに勤務、自転車冒険家との二足のワラジを履きながら昨年に勇退されるまでセンターで勤めました。そして、ねぎらいを込め昨年11月から「世界を駆け抜けた自転車冒険家の軌跡」と題して、池本氏の愛車「タルーゼ号」など10台のキャンピング自転車が常設され、体験を伝えています。

taruze
▲ 1978年にキリマンジャロ登頂したタルーゼⅢ号 

 

「タル―ゼ号」のネーミングは「やったるぜ!」という意気込みが由来でNational製のツーリング車です。池本氏は、髙橋氏とメーカーによるサポート、そして持ち前のタルーゼ精神により、世界五大陸走破やキリマンジャロ登頂など偉業を成し遂げます。

その冒険旅行は書籍だけでなく、雑誌広告やカレンダーにもなり、僻地の記憶とロマンを当時の人たちに紹介しました。バックパッカーのバイブルとされている沢木耕太郎「深夜特急」が1980年代の紀行書なので、その10年以上前に道なき道を単独で自走していたというのですから驚きです。

 

national bike
1974年ナショナル自転車のカレンダー (所蔵:サイクルショップ203)

 

アフリカから帰国後、池本氏は日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)を創設。自転車で世界一周を達成したメンバーを中心に構成されるこの団体には、植村直己賞受賞者の中西大輔氏や劇作家の平田オリザ氏などおよそ300名が所属、次世代へ夢をつなげています。

 

pedalian

 

また、JACCが1982年から年4回発行している季刊紙「ペダリアン」は、150号を超え、現在の発行部数は10000部と冒険家たちの体験を伝え続けています。

 

kansai cycle sports center

センターには「タルーゼ号」を含む10台が出展者の行程やメッセージなどと共に展示されていますので、遊びに行った際は是非ご覧ください。

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